都市計画論文集
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都市計画論文集
選択された号の論文の152件中1~50を表示しています
  • ヘドニック分析における中心駅の選択
    西 颯人, 浅見 泰司
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 501-507
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    不動産価格の分析において、中心エリアへのアクセス性は基礎的な要素であり、東京では鉄道が最も重要な公共交通機関となっている。このため、多くの研究者が中心駅までの距離をヘドニック回帰分析のコントロール変数として採用している。しかし、どの駅が適切な中心駅であるかは自明ではない。そこでこの問題を解消するために、距離と価格の関係の非線形性を捉えた、よりよい中心駅を選ぶためのアプローチを提案する。提案手法を用いたデータ分析の結果、東京23区の居住用土地市場の単価を回帰する場合には、渋谷駅を中心駅とすることが示唆された。

  • 福岡県福岡市那珂川を対象として
    渡邉 佑哉, 高取 千佳
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 508-515
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、都市の中での貴重な水辺空間として、河川空間が注目されている。河川空間は、線上に広がるオープンスペースであり、その特性を活かした水辺空間の整備により、都市の中に広域に賑わいをもたらすことが期待されている。本研究では、様々な整備主体がみられ、今まさに親水空間としての利活用が進められている福岡市の那珂川の特性に着目し、河川周辺の土地利用や護岸状況などの河川環境と、そこで行われる人々の移動・滞留行動についてGPSデータを利用することで広域的に分析した。その結果、移動・滞在行動に影響を与える河川環境の要因についての整理ができ、那珂川が現在どのように利用され、今後どのように利用される可能性があるかが明らかになった。

  • 埼玉県を対象としたケーススタディ
    山田 拓実, 岡澤 由季, 稲垣 遥大, 成澤 拓実, 岡村 幸樹, 竹内 萌恵, 薄井 宏行
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 516-522
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画の策定が全国で進んでおり、各自治体は主に人口密度を基準として居住誘導区域の指定を行っている。ところが、建築物や道路などの都市の物的環境や農地の量や配置(都市形態)は十分に考慮されておらず、居住誘導が望ましくない区域もある。本研究では、都市形態のうち量として土地利用の構成と建物密度に着目する。埼玉県を対象にクラスタ―分析を行い、土地利用の構成と建物密度に基づいて都市形態を類型化し、その結果と居住誘導区域および人口密度を比較することで、土地利用の構成、建物密度と人口密度から居住誘導区域の特徴を明らかにした。主要な知見として、(1)建築物・道路・農地が混在している区域(農住混在地)は居住誘導区域の境界部に多く位置し、そのような区域を居住誘導区域内に含む割合は18.9%(川越市)から72.4%(越生町)まで幅広く分布すること、(2)居住誘導区域内であっても、市街地と農住混在地では人口密度の分布に明確な差があることがわかった。各自治体が居住誘導区域を定める際には、都市形態の量の観点から即地的に分析し、居住誘導区域内であっても都市形態を考慮して人口密度を把握すべきである。

  • さいたま市の取組みをもとに人の移動・活動の観点から検討手法を考える
    稲原 宏, 石川 岳男, 矢田部 貴司, 近藤 和宏, 菊池 雅彦
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 523-530
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    立地適正化計画において各都市は都市機能区域を検討しているが,賑わいへの影響を考慮した検討は浸透していない.本研究では,都市機能誘導区域の検討にて,人中心のまちづくりを推進するために,さいたま市での取組みをもとに市街地の構造が人の移動・活動に与える影響を分析し,まちの賑わい効果を明らかにするとともに,都市機能誘導区域内の誘導施設の配置を人の移動・活動などのまちの賑わいの観点から検討する際に活用ができる,交通行動モデル構築よりも作業負担が低い簡易で実務レベルに耐えうる分析手法を提示することを目的とする.本研究では,さいたま市を対象に,既存の都市計画基礎調査やパーソントリップ調査等のデータを組み合わて,市街地の構造が人の移動・活動などの賑わいに与える影響を分析した.その結果,市街地の構造,特に誘導施設の配置を検討する際に,土地利用だけでは把握できない賑わいの効果や誘導施設が周辺に与える影響などを把握することができる実用的な分析手法を提案した.

  • 大久保 彰洋, 岸本 達也
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 531-538
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    鉄道ネットワークの分析は,グラフ理論を用いた研究がいくつか行われている。しかし,空間ネットワークの構築に急行や快速などの列車種別は考慮されておらず,列車種別が多様化した複雑な交通ネットワークを解析することは困難であった。本研究では,東京都市圏の各路線において列車種別の停車駅および運転本数を考慮した鉄道ネットワークモデルを構築し,2018年の首都圏の PT調査の駅間トリップのODデータからより現実の移動に即した旅客流動および移動時間を再現した。そして鉄道ネットワークの解析から駅のアクセシビリティ評価に用いるための11の指標を提案した。さらに主成分分析とクラスター分析によって駅を5つのクラスターに分類し,各駅の特徴を定量的に評価した。これらの分類によって,駅ごとのアクセシビリティやコンパクト性が可視化され,列車の在り方が多様化した日本の複雑な鉄道ネットワークから都市構造を把握することができた。

  • 宇都宮市におけるLRT導入や立地適正化計画等の施策効果の分析
    磯野 昂士, 石井 良治, 高橋 慧, 高 宇涵, 小出 和政, 千田 亮輔, 冨岡 秀虎, 森本 章倫
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 539-546
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    人々のウェルビーイング向上と持続可能な都市経営を実現するため,目指すべき都市構造の意義や施策の効果について多様なステークホルダー間で共有するプランニングプロセスの必要性が高まっている.本研究では,3D都市モデル等をインプットとして活用し,個々の建築物の建て替え,個人の転居・居住地選択,ゾーン単位の地価を推計するサブモデル等を組み合わせた都市構造シミュレーションを構築し,宇都宮市を対象に,立地適正化計画やLRT等の施策が土地利用や人口分布に与える影響を分析した.その結果,LRTの開業やバスの利便性向上,居住や都市機能の誘導といった施策によって,LRT沿線の個別の建築物の用途の変化や人口の増加等の効果を把握することができた.

  • 広島県福山市を対象として
    信野 翔満, 佐々木 葉
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 547-554
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    駐車場のような低未利用地がランダムに出現する現象である「都市のスポンジ化」は、地方都市における深刻な課題である。この現象を構造的に理解することは、その対策のために必要である。本研究では、福山市を対象として、駐車場の立地状況の空間自己相関分析と、スペースシンタックス理論による街路構造分析とを行い、両者の関係を時間的に明らかにした。その結果、駐車場の集積と街路のアクセス性の傾向の時代的変化を明らかにした。また地区の詳細調査によって、コインパーキングがアクセス性の高い場所に立地している傾向を示した。以上より、ランダムと見做されている「都市のスポンジ化」現象の特性を都市空間構造との関係で読み取ることを可能にした。

  • 近藤 紀章, 田中 勝也
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 555-561
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、住民意識調査を用いて、まちづくり施策に対する問題意識(重要度評価)をBWSにより評価した。まちづくりに含まれる社会的望ましさのバイアスを低減するために、従来型の主観評価と比較した。混合ロジットモデルの推定結果から、まちづくり施策に対する住民意識が確認できた。次に、主観評価だけでなく、より客観的な推論評価においても妥当な解釈が可能であること、主観評価と推論評価においてまちづくり意識に対する乖離が確認された。社会的望ましさのバイアスを考慮した結果、活性化や災害対策は、自分は他者よりも地域社会の役に立つという独善効果の可能性とBWSにおける単純集計は、混合ロジットモデルと比較して地域課題の重要性を過小評価していることがわかった。

  • 和田 吉史, 浅見 泰司, 樋野 公宏, 鈴木 雅智
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 562-569
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    テレワークは新しい働き方として日本社会に普及しつつあり、COVID-19の収束後も社会に定着すると予想される。テレワークがもたらす影響として郊外人口の増加や都市圏の拡大が予想され、近年国策として進められているコンパクトシティの実現を困難にすることが見込まれる。そこで本研究ではテレワークの利用施設であるワーキングスペースに着目し、「ワーキングスペースの存在がテレワークによる市街地の広がりを抑制する」という仮説の下、都市経済モデルを用いることでワーキングスペースが都市圏に与える影響を分析した。分析の結果、ワーキングスペースの存在によってスペースが効率的に利用されることで都心から少し離れた範囲で人口が増加し、都市圏が集約されることが確認された。さらにワーキングスペースの成立条件やワーキングスペースが存在する場合の市街地の状況が明らかになった。業者によるワーキングスペースの設置を自治体が適切に促進することでコンパクトシティの実現が期待される。

  • 千葉県における町丁目及び地域メッシュ単位における建物当たり人口及び世帯数との比較分析
    薄井 宏行
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 570-577
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では,基本単位区,町丁目,250mメッシュ単位(基本単位区等)において,建物当たり平均人口,建物当たり平均世帯数,そして平均世帯人員(各建物利用強度)を算出し,その空間的な分布の特徴を基本単位区等の集計単位の違いに着目して解明した.主な知見はつぎの二点である.第一に,千葉県北東部や南部では,建物当たり平均人口と世帯数は1未満となる基本単位区が連坦する一方,北西部を中心に人口集中地区(DID)とその周辺では,建物当たり平均人口と世帯数は1以上となる基本単位区が連坦する.第二に,基本単位区における各建物利用強度を町丁目や250mメッシュ単位で推定する際の差分の空間的分布をみると,千葉県北東部や南部では,差分は0近傍となる基本単位区が連坦する一方,北西部を中心にDIDとその周辺では,差分の絶対値は1以上となる基本単位区が連坦する.とくに,同一の町丁目において戸建住宅と高層住宅が立地する場合,戸建住宅で主に構成される基本単位区では,町丁目単位や250mメッシュ単位ですると10以上の過大推定となるおそれがある.逆に,中高層住宅で構成される基本単位区では,10以上の過小推定となるおそれがあることに留意すべきである.

  • 古藤 浩
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 578-584
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    人口予測は、都市計画や地域計画にとって重要である.なぜなら,施設計画では需要を予測する必要があり、人口は需要を求めるための基礎となるためである.しかし,予測人口と実現した人口を比較すると、ある程度の誤差が生じる。 本稿では、人口推計においてどの程度の誤差が考えられるかという情報の必要に,多様な人口の市区町村に通底した法則性を仮定しある程度の見積もりを与える. 都市計画では趨勢とは異なる人口を目標とすることがしばしばあり,本研究の方法は,目標人口達成の難度を現在の人口を材料に判断するシンプルな手法ともなる.なお,本研究は社人研による,性年齢別5歳階級別の人口推計結果と,国勢調査結果を分析対象とする.

  • 嚴 先鏞, 長谷川 大輔
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 585-591
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国は急激な人口減少時代に突入し,効率的・効果的に都市機能を持続させるために,全国の自治体で立地適正化計画などの都市の拠点設定による集約化が検討されている.本研究では,人口変動を考慮しながら住民の近接性と拠点維持・配置コストの両立のために住民の移動距離,配置する施設数,拠点数,新規施設数を考慮した拠点計画モデルを提案し,都市の人口規模による将来拠点計画の戦略を検討した.第一に,提案したモデルを関東地方に適用した結果,配置された拠点の量と立地において将来人口変動を考慮していないモデルと違いがあることを明らかにした.第二に, 3割程度の自治体で配置される拠点数が異なること,拠点数が同じであっても将来人口を考慮することで最適となる立地が異なることが分かった.第三に,人口現象が激しくない地域では人口減少を考慮した縮小された拠点計画が必要であること,人口減少が激しい地域では将来の急激なコストの増加を抑制するために初期段階で多く拠点を配置して段階的に縮小していく必要があることを明らかにした.本研究の結果は,人口変動を考慮した多様な計画案の基礎を提供し,将来の空間計画の戦略の検討に貢献できる.

  • 草津川跡地公園での市民活動促進に関するヒアリング調査
    松原 実咲, 金 度源, 大窪 健之
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 592-599
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、草津川跡地公園における市民活動の促進・積極化に資することを目的としている。草津川跡地公園で行われている市民活動に着目し、地域活動団体が公園での活動において公園内に求める要素を分析した。まず、市民活動メンバーへのインタビュー調査を実施し、調査対象者を参加動機や活動場所などから6つの活動タイプに分類した。その後公園に求める要素を抽出し、活動タイプごとに分析を行った。その結果、以下のような知見を得ることができた。抽出された要素は10種類であり、いずれも公園内に存在する要素であった。また、各グループが求める要素は異なることがわかった。一方、「人とのコミュニケーションやつながり」の要素は、どのグループも共通して求めていることがわかった。

  • 北九州道路サポーター制度を対象として
    門司 雅道, 森本 琉, 長 聡子, 吉武 哲信
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 600-607
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,アダプト型の道路美化活動が多様な地域コミュニティ活動を活性化している可能性を検証するために,北九州市道路サポーター制度を対象に,同制度で活動を行うリーダー的住民14名の,アダプト協定に基づく活動とそれ以外の地域コミュニティ活動,及びそれらの相互関係を明らかにしたものである.この結果,道路サポーター制度は協定活動の他,活動者の居住地周辺で行われる多様な地域のコミュニティ活動を促し,また地域コミュニティ内の人々の連携拡大,多様な行政組織との連携を支援していることが明らかとなった.一方で道路サポーターが関わる活動は地域密着型のものが多く,その空間的範囲は限定的であることも明らかとなった.

  • 松林 優奈, 齊藤 広子
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 608-615
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    日本の計画的戸建住宅地で、共有持ち分の維持管理を目的とした、管理組織を設立するにあたり、区分所有法を根拠とした管理組合を設立することが広く行われている。ただし、マンションでの区分所有を想定して作られた法律を住宅地でのマネジメントに無理やり適用させ使ってきたため、区分所有法を住宅地の管理組合に適用することへの限界やその課題が時代の流れとともに浮かび上がっている。日本の住宅地のマネジメントにおいてはより良いマネジメントシステムの構築のために法制度の再考をしていく必要がある。そこで、本研究では、HOAの設立とその運営に関する米国の法制度に着目し、日本の運営制度の問題点と比較検討する。

  • 東京都および政令指定都市を対象として
    川野 裕司, 岡井 有佳
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 616-623
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    地区の魅力を高めるというエリアマネジメントの目的のために、総合設計制度により生み出される公開空地の活用が求められる。しかし、公開空地の占用に関して、特段の法令上の定めはなく、自治体独自で運用されている。本研究の目的は、地域の活性化や賑わい創出を目的とした公開空地の占用の基準とエリアマネジメントにおける公開空地の活用実態を明らかにすることである。公開空地の目的を逸脱しない範囲内で、占用を可能にする基準を定める都市が増えており、公開空地の利活用が進んできている。公共性を有する占用主体による積極的な公開空地の活用を促進している都市もある。

  • 関根 仁美, 角保 智也, 武田 裕之, 加賀 有津子
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 624-631
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年まちづくりを円滑に進めるため地域愛着が注目されており、持続願望や定住意向と相関関係があるとされているが、持続的な地域あるいは社会を目指すにあたり、今後人口減少に合わせて地域の生活機能や都市機能を変化させることや、住民に転出後も関係人口として地域との関係を継続してもらう必要がある。以上の背景から本研究では、将来の地域づくりという視点で地域愛着を捉えるため、愛着を感じる理由と将来の地域づくりへの態度について調査を行った。また地域愛着の強弱だけでなく、愛着スタイルによる違いを比較分析した。その結果、出身地であることが愛着を生成する一因であることや、利便性が愛着を強める一因であること、また愛着スタイル理論が住民と地域との関係においても適用できる可能性があること、必ずしも地域愛着の高いグループが将来の地域づくりにとって肯定的な態度を取るとは限らないことを明らかにした。

  • 岐阜県飛騨市古川町の古川祭を対象として
    森島 明日香, 金 度源, 大窪 健之
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 632-639
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、古川祭への参加と地域愛着との関係を明らかにすることを目的としている。地域愛着と世代間交流の間に関係性があることや、世代間交流が増えることで地域愛着が醸成されることが明らかとなった。また、人手を必要とする行程や神への奉仕の行程に参加することで、直接的に地域愛着が醸成される可能性が示唆された。さらに、裏方の行程に携わることは、年上との交流を通じて地域愛着を間接的に高める可能性が示唆された。

  • 金沢工業大学に在学する大学生を対象として
    森 豪大, 籔谷 祐介, 春木 孝之
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 640-647
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    シビックプライドとは、都市に対する市民の誇り定義され、地域を良くしようという当事者意識に基づくものである。人口減少が進む日本では、Uターン人口増加の手がかりとしてシビックプライドが注目されている。そこで、地元に対するシビックプライドと、環境要因に対する意識が、Uターン意向の形成にどのような影響を与えるかを調査した。ランダムフォレストの結果、大学生のUターン意向形成には、第1に地元に希望する仕事があること、第2に地元に住み続けたいという意識、第3に地元にいる家族や友人の存在が影響を与えることがわかった。

  • 齊藤 広子
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 648-655
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、マンションをした事例から、解消を円滑に進めるための課題を明らかにした。具体的にはつなぎ融資の問題、専門家の支援体制、居住支援の問題、経済的な課題等がある。それを踏まえて経済的な側面に注目し、マンションの解消の実現の可能性を検討した。結果、横浜市の旧耐震マンションを例に試算すると、敷地を売却しても解体費すら捻出できないマンションが0.6%存在する。また、94.3%のマンションでは土地の売却費で近隣マンションを購入できない。よって、円滑にマンション解消を進めるには、マンション解消後の居住者の転居先を含めた幅広い居住政策や金融政策との連携、専門家の育成等が必要となる。

  • 龍野 杏奈, 松行 美帆子, 田中 伸治, 安部 遼祐
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 656-663
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、鉄道の駅周辺では、超高層集合住宅を伴う都市再開発事業が多く実施されており、このような都市再開発事業は、コンパクトシティの形成に寄与すると考えられている。しかし、その影響について十分な評価がなされないまま承認されてきた。そこで、本研究では、超高層集合住宅を伴う都市再開発事業がコンパクトシティの形成に与える影響とその効果を検討し、鉄道駅周辺の都市再開発事業の今後のあり方を検討することを目的とする。指標を設定して、その指標に則り、首都圏郊外における超高層集合住宅を伴う都市再開発事業の29事例の評価と、駅周辺の超高層集合住宅居住者へのアンケート調査の結果による評価を実施した。その結果、超高層集合住宅を伴う市街地再開発事業自体のコンパクトシティ形成に対しての影響は、事業により直接もたらされる効果である歩行者環境や交通広場などの整備による効果は大きかったが、駅周辺への人口の集約、生活利便性の向上、地域経済の活性化などについては大きな効果があるとは言い難い結果となった。また、駅近くの超高層集合住宅への転居による効果についても、もとから駅近くに居住していた人が多く、大きな効果はなく、かつ効果があったものも、超高層集合住宅という住宅の形態ではなく、駅の近くという場所の特性による効果であったと考えられる。

  • YKK株式会社を事例として
    不動 友輝, 加藤 博和
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 664-671
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    長年、日本では東京一極集中の是正の観点から、東京から地方への本社機能の移転が期待されているが、「移転に伴う転勤者」(本論文では単に「転勤者」と称する)の地方生活の実態について分析した研究はみられない。そこで本研究では、企業と自治体にヒアリングを実施し、それらが行う転勤者の「生活水準確保策」の内容を整理した。また「転勤者」と「移転に伴う転勤を経験していない従業員」(本研究では単に「非転勤者」と称する)を対象に、地方生活の満足度を尋ねるアンケートを実施し、その結果を両者間で比較することで、転勤者特有の生活実感を把握した。その結果、「自治体は転勤者の生活実態を十分に把握できていないこと」、および「企業や自治体が転勤者の『生活水準確保策』を行っているものの、それらの施策と『転勤者が生活の中で感じていること』との間のギャップが解消しきれていないこと」が示唆された。

  • 石黒 壮真, 阿部 大輔
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 672-679
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、全国で展開された引揚者住宅政策の一つの事例として京都市を取り上げ、引揚者住宅の供給・廃止政策、引揚者住宅の廃止プロセスと府議会での議論、京都府内最大の引揚者住宅であった高野川寮を対象に、引揚者寮の運営と寮構造と居室構成等から居住環境の実態を明らかにした。 結果として、京都における引揚者住宅政策の変遷としては、1946年から1951年にかけて遊休施設を転用した引揚者寮の設置と大邸宅等の余裕住宅の開放が行われた。1950年以降は、応急的な引揚者寮の住民の住環境を改善するため疎開住宅を建設された。1955年以降、寮の廃止に消極的であった京都府が財政再建のために、引揚者寮の廃止へと大きく方針転換することになった。高野川寮の実態として、寮の居住環境は簡素な造りで、狭小な空間であったため居住環境は劣悪であった。一方で、病院・市場・保育園等といった応急的な施設ながらも生活を支える基盤が存在し、施設というよりも一つの町として引揚者の自力更生を支援した。また、運営は府から派遣された寮長ではなく、実質的には住民によって組織された自治会によって運営された。

  • 産業分類別従業者数に着目して
    山本 英輝, 黒瀬 武史
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 680-687
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    明治維新後、各都道府県の行政機関の中枢機能として都道府県庁(以下県庁)が置かれたが、その後施設の狭隘化や老朽化といった課題への対応に迫られ、いくつかの県では県庁舎の移転を行った。本研究では、県庁移転の概要と経緯を整理し、移転先の立地として中心市街地内、中心市街地近郊と郊外があることを明らかにした。そのうえで、移転した県庁舎周辺地区の特性を明らかにした。県庁舎周辺地区には、県庁や県議会に直接関係のある事業所に加え、県全域にサービスを行う産業が集積しやすいことがわかった。また、県庁に関連する産業の集積が共通してみられた典型的な県庁周辺地区では、県庁建設用地取得時から周囲に関連する事業所が立地できる街区が存在し、地区計画等で拠点の形成を促す施策がとられていた。

  • Park(ing)Day2021神田を事例として
    中島 伸, 泉山 塁威, 菅原 遼, 森本 あんな, 一之瀬 大雅, 小野寺 瑞穂, 飛田 龍佑, 原 唯菜
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 688-695
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、Park(ing)Day 2021神田 の社会実験を対象に歩車共存に向けた車道占用による道路空間活用の成果と課題について知見を得ることが目的である。<br />本研究は、車道及び路上駐車場を活用したPark(ing)Dayの実践及び参与観察を通じて、企画や協議等を踏まえた実践プロセスを明らかにする点、さらに、一般車規制をした歩行者天国はイベント化してしまい、日常的な道路空間活用には繋がりにくいという問題意識の元、一般車規制をせずに車道及び路上駐車場を活用し歩車共存道路を目指した実践の検証である点の2点に新規性を挙げることができる。 一般車規制をせずに車道及び路上駐車場を活用し歩車共存道路を目指した実践の検証として、滞留空間を設置したことで、様々な利用者の行為誘発することができた。 安全性の確保の問題から警察・行政協議を通じて、空間的な制約の大きいドラムクッションの設置することでの実施となったことからも、安全性の確保と滞留空間の居心地の良さのバランスが課題であることが明らかになった。

  • 土地利用と接続性に着目して
    佐藤 良介, 岡田 潤, 中村 文彦, 出口 敦
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 696-703
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    鉄道線路が角度をもって交差する「交差駅」は、複数の路線が乗り入れる重要性の高い駅であるが、駅周辺は鉄道線路の交差により4つの「象限」に分断されるなど、制約の多い特殊な市街地である。本研究は、東京40km圏において抽出された25の交差駅を対象として、その土地利用と、4象限間での土地利用の差異を明らかにした。そして改札の有無や駅周辺の歩き回りやすさといった象限間の接続性の格差の観点から、土地利用の実態に対し分析を行った。その結果、接続性の象限間格差が大きいほどに商業集積が少なく、低未利用地が多い土地利用となることが明らかとなった。また象限間における土地利用の差異は生じやすいという交差駅の傾向から、交差駅の価値として象限間の機能分担に適しているという点が見出された。

  • 高畠 佑樹, 大沢 昌玄, 中村 英夫
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 704-710
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    駅前広場及びその周辺を計画的に整備した地域では都市機能が集成している状況が見られる一方で、駅が存在するものの計画的な駅前広場の整備も行われていなく、都市機能が集積されていない状況もある。そのため、駅があるだけではなく、駅前広場及びその周辺を計画的に整備することが重要であると考えられる。<br /> そこで本研究では、駅前広場の整備状況の違いから見た都市機能誘導施設の立地差異を明らかにすることを目的とする。<br /> その結果、一部の例外を除き、駅前広場を整備した場合、既成市街地、新市街地に関係なく施設数が多くなることが示された。また、駅前広場を面的に整備すると他のパターンよりも施設数が多くなり、また新市街地では、一部の例外を除き、線的に整備した駅前広場周辺の施設は、駅前広場を整備していない場合と差が見られず、整備による駅前広場周辺の施設増加の効果を出すことが出来ないという特性があることが明らかになった。

  • 静岡市用宗地区での取組に着目して
    奥野 慎, 高見沢 実, 尹 莊植
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 711-718
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、地方都市における担い手不足や開発需要の低下により疲弊しつつある背景から、小規模な事業を起点とした面的な再生が期待される中で、起点となる自社事業を事業化させるための工夫、その後どのように展開したかに注目して、1)起点となる自社事業の事業化に向けた工夫、2)取組全体を通じた連鎖的展開プロセスと成立要因について明らかにすることを目的とした。結果として、取組は3つの段階(取組前段階・事業化段階・事業波及段階)に分けられ、1)自社事業の事業化に向けた工夫としては、企画デザイン、情報収集・発信、組織体制の3つの視点で明らかにした。2)連鎖的展開の成立要因としては、主な成立要因を立地条件や周辺環境、事業成立のための性質、人的なつながり、ローカルな情報という4つに分類し明らかにした。

  • 松戸駅周辺のMAD Cityプロジェクトの事例研究
    中島 弘貴, 馬塲 弘樹
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 719-726
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、松戸駅周辺の「MAD City」プロジェクトの事例研究を通して、地域起業家および社会的企業の起業エコシステム通じた既成市街地の再生の実態把握を行った。ここでいうエコシステムとは、起業を生み出すための相互に関連した人々の集団や支援環境を指す。本研究では、地域起業家の中には、地域サービスの向上に貢献する事業を展開しながらも、地域内の社会環境に依存しない起業家が存在することを明らかにした。また、性別や子どもの有無によって、地域起業家が重視する環境、依存する環境に違いがあることも明らかになった。社会的企業は、自社で展開する事業の中で起業家と協働することで、地域に必ずしも依存しない起業家と地域の主体との関係構築に寄与し、更なる起業や付随する地域サービスの充実に貢献することで、市街地再生に資する事業展開を促進する起業エコシステムを醸成していた。

  • 李 子贏, 青木 俊明
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 727-734
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、居住地域に関するポジティブな場所の記憶とネガティブな場所の記憶が得られた場所の特徴を明らかにすることを目的とする。都市部および農山村部の住民を対象としてWeb調査を実施した。263件の有効な回答が得られた。回答者は、居住地域内の場所の記憶を思い出して自由に記述するように求められた。収集されたテキストデータに対してテキストマイニング分析を行い、各群の特徴的な語句を特定した。その結果、都市部と農山村部の場所の記憶の形成構造は著しく異なることが明らかになった。都市部におけるポジティブな場所の記憶は、余暇活動によって形成されることがうかがえた。都市部におけるネガティブな場所の記憶は、主に対人関係によって形成されることが示唆された。一方、農山村部におけるポジティブな記憶は、都市部と同様に余暇活動によって形成されると考えられるが、その独自な構成要素は本格的な自然環境と地域文化である。農山村部におけるネガティブな記憶は、主に対人トラブルや住環境への不満によって形成されると考えられる。ポジティブおよびネガティブな場所の特徴の両方を理解することが、心豊かな生活を送れる居住環境の創出に貢献することが期待されている。

  • 富山市を事例に
    衣笠 匠斗, 樋野 公宏, 別所 あかね, 貞広 幸雄
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 735-742
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    各地で推進されているコンパクトシティ化は、人々の買い物環境に少なからず影響を与えると考えられる。本研究では、集約型都市構造推進下における誘導区域内外での買い物環境の時系列変化と、その空間的差異の実態を解明するため、富山市を対象に全居住者、高齢者、公営住宅居住者の三者について、スーパーマーケットへの近接性の変化を道路距離に基づき分析した。結果、以下の5点が明らかになった。1)市全体に加え市内の居住誘導区域においても近接性低下が見られる。2)高齢者の近接性低下は市全体より顕著であり、2021年時点では高齢者は近接性が比較的低い地域に居住する傾向にある。3)公営住宅居住者の近接性も大きく低下しており、2021年時点での近接性は市全体の平均と同程度である。4)近接性低下はスーパーマーケットの立地変化によりもたらされている。5)店舗の出退店は周辺人口の増減と相関している。

  • 農地の計画手法の構築に向けて
    小松 萌, 有賀 隆
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 743-750
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、都市住民を担い手とする農地の保全や活用のための農地の計画手法を都心度や既存の農地の立地状況に応じて構築する必要性を述べた上で、地価公示価格や都心距離圏によって示される都心度に基づく都市の類型と、農地の都市基盤との距離によって示される農地の立地特性に基づく都市の類型を組み合わせることで、都心度と農地の立地特性との関係から関東大都市圏の67区を分類した。その結果、13個の類型に分類するとともに各類型の特徴を明らかにし、都心3区との総合的な類似性が高いエリアでありながら農地が比較的多く残っており、農地が都市・自然インフラ双方と近い距離、つまり都市住民の住生活にとって重要な場所に立地している区として川崎市多摩区を位置付けた。

  • 今井 巧, 雨宮 護, 島田 貴仁, 讃井 知, 大山 智也
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 751-758
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    子供が被害者となる声かけやつきまといなどの前兆事案は,子供から保護者に被害が伝わったとしても,保護者が警察や学校に被害を連絡しないことによって被害が暗数化し,事案への対応が遅れることが懸念される.本研究では,保護者の子供の前兆事案被害情報に関する警察や学校への連絡意図を形成する要因の解明を目的とした.ウェブアンケート調査により得られた,ある政令指定都市に住み,小中学生を第一子に持つ20歳から59歳の男女(n=518)のデータを用いて順序ロジスティック回帰分析を行った.その結果,事案の深刻さや連絡の効果,連絡の自己効力感の認知が保護者の警察・学校への連絡意図に正の関連を持つことが明らかになった.

  • 滋賀県旧志賀町の9地区の事例から
    落合 知帆, ワン ジンイン
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 759-766
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、旧志賀町17ケ村のうち、比良山麓地域に位置するの9ケ村(現在は地区となっている)を対象として、以下の3点を目的とした。1) シシ垣に関する絵図を確認しながら各地区におけるシシ垣の配置を明らかにし、2) 現存するシシ垣の配置、形状、石積み方法および現在の状態を比較分析することで、地域に残されたシシ垣遺構の特徴や実態を示す。また、3) これらの解体要因を明らかにする。

  • 世田谷区を事例にして
    中島 由貴, 秋田 典子
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 767-773
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    都市農地は2015年の都市農業振興計画にて「宅地化すべきもの」から「あるべきもの」へ位置付けが転換されたように貴重な存在である。しかし、都市農地の大部分を占める生産緑地は営農従事者の高齢化等の理由により減少が続いている。そこで本研究は、生産緑地を農地として保全する場合、自治体はどのような戦略のもとで生産緑地に位置付けをし、生産緑地の買い取り請求制度を運用することが求められるのかを明らかとすることを研究目的とし、先進的に生産緑地の買い取りを行なってきた世田谷区をケーススタディとして研究を行った。 研究の結果、世田谷区は保全すべき生産緑地を、生産緑地の買い取りを進めるために策定した方針に沿い選定し、生産緑地として運用中に都市計画公園として都市計画決定をするなど、既存のしくみを上手く組み合わせることによって、保全すべき生産緑地に位置付けをし、農地を戦略的に保全しようとしていることが明らかとなった。

  • 吉田 尭史, 大野 朋子
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 774-779
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、都心部に多く見られる線形的な街路における緑視率の高さと街路樹の植栽デザインが人々の快適性に与える影響について調査した。まず、 落葉樹・常緑樹・生垣などの街路樹種の選定およびその配置といった植栽デザインの違いによる快適性の感じ方について調べたところ明るい印象のある落葉樹を街路に配した植栽デザインが好まれることが明らかになった。さらに、緑視率の違いによる快適性の差異について調べたところ、緑視率が 25% の風景が最も快適に感じられることが明らかになった。また、生活志向や年齢層などの違いによる快適に感じる緑視率に違いについて調べたところ、アウトドア志向の人はより緑視率が高い街路景観を好む一方でインドア志向の人は緑視率が高すぎない街路景観を好む傾向があった。そして、年齢層別に見ると、高年齢層は他の年齢層に比べて緑視率が低い街路景観を不快に感じる傾向があることが明らかになった。以上のことから街路景観においては植栽デザインおよび緑視率によって快適性が異なるだけでなく、生活者の生活志向や年齢によっても快適性の感じ方に違いがあることが明らかとなった。

  • 山石 季沙, 松本 邦彦, 澤木 昌典
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 780-787
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、域外チェーンが出店する歴史的環境を有する観光地景観を対象に、その景観に対する来訪者の評価構造を把握し、均質的な印象を形成する景観構成要素およびそれらに対する景観コントロールの導入効果について明らかにする。評価グリッド法の結果から、均質的な印象は一般市街地に氾濫する意匠・素材・商品の存在、広告物の数やその記載情報により形成されていることを明らかにした。加えて、移設が容易な立て看板・ポスター等により均質的と印象付けられていることを示した。以上から、地域組織、自治体、事業者の3者で評価基準を定め均質的な印象を与える構成要素を除去すること、そして均質的な印象形成の抑制には、届出後に地域組織や自治体の確認を受けずに掲出される状況への対応のため、事業者と地域組織が定期的な協議や点検を行うなどの有効性が示唆された。

  • 若佐 栞, 西川 亮
    原稿種別: 論説・報告
    2023 年 58 巻 3 号 p. 788-795
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、1994年の経済政策によって規制が緩和され、増加したビール・発泡酒のマイクロブルワリー(以下、MB)に着目し、MBが地域とどのように、どのような繫がりを構築しているかについて明らかにすることを目的とする。アンケート調査より、マイクロブルワリーは製造工程、提供工程、さらには提供空間で多様な地域との繫がりを構築していることが明らかになった。さらにヒアリング調査より、MBと地域の繋がりはMBが自ら繋がりを構築するものと、地域内の主体からの依頼によって構築されるものがあり、地域産品の活用や観光客誘致、住民のコミュニティ創出など多様な役割を果たす可能性を有していることが示唆された。

  • 洪水抑制効果と熱環境改善効果に着目して
    平井 慎二, 荒木 良太, 山鹿 力揮, 田村 将太, 田中 貴宏, 横山 真, 松尾 薫
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 796-803
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、気候変動の進行に伴う水害や都市高温化などが発生しており、それらに対する適応策としてグリーンインフラ(GI)が注目されている。実際の都市空間でのGI導入を考えた場合、その導入場所の確保が課題となるが、近年、地方都市では人口減少に伴う低未利用地の増加が著しく、これらをGI導入の対象地として活用することが有効であると考えられる。本研究は、広島県呉市中央地区を対象として低未利用地のGI化による洪水抑制効果と熱環境改善効果の把握を行い、その両面においてGI導入効果が高いエリアを把握することを目的とした。その結果、低未利用地へのGI導入が洪水被害と都市高温化を一定程度軽減できることが判明した。特に、人口減少が進む斜面市街地へのGI導入が効果的と分かった。

  • 公有地と民有地の違いに着目して
    忽那 直哉, 右寺 智哉, 田村 将太, 田中 貴宏
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 804-811
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年都市高温化が進み、夏季の熱的快適性低下等の様々な影響が生じている。特に都市中心部は多くの人々が生活しており、屋外空間の熱環境改善は喫緊の課題といえる。従来、屋外熱環境の改善は、街路等の公有地で行われてきたが、近年は民間のまちづくりによる駐車場等の民有地での環境整備が行われるようになりつつある。そこで本研究では、広島都心部を対象に、まずエリア全体の歩行者分布の熱環境による影響を把握し、次に、公有地と民有地それぞれに対して熱環境改善策を導入し、数値計算を用いて熱環境改善効果を評価することで、そのポテンシャルを把握することを目的とした。結果として、夏季と秋季の歩行者分布に差が見られた。そのため、夏季の屋外の歩行者分布は熱環境の制約を受けていると考えられ、夏季熱環境の改善が必要といえる。また、公有地と民有地の両方への熱環境改善策導入の熱環境改善効果が大きく、公有地と民有地への連続的な緑地や一体的な熱環境改善が効果となって現れたと考えられる。そのため、導入に向けて、官民連携によるまちづくりの現場で、熱環境改善策導入を支援するツールの提案が必要と考えられる。

  • 松尾 薫, 松本 千之輔, 武田 重昭, 加我 宏之
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 812-818
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    生活習慣病の予防に対して、日常生活での身体活動が効果的であり、身近な公園は楽しみながら身体を動かせる安全な場と言われている。そこで、本研究では郊外住宅地内の住区基幹公園の利用実態を身体活動量から捉えることで、人々の健康を支える場としての公園を評価することを目的とした。その結果、同伴者や活動内容によって、身体活動実施者数と身体活動量の傾向は異なることが読み取れた。具体的には子どもや友人といった同伴者と公園に訪れると活動時間が長くなり、サッカーや野球といった強度の高い活動と同程度の合計身体活動量を確保できると考えられる。また公園のグラウンドは強度の高い活動が比較的多く行われているが、充実した遊具広場は、強度は低いものの時間の長い身体活動の場として有効に機能しているといえる。

  • 当初事例である熊本県天草地域を事例として
    荒木 笙子, 眞駈 来美, 木村 伶皇, 秋田 典子
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 819-826
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は、防災集団移転促進事業創設時の立法プロセスと事業要件、事業内容、50年経過後の実態を明らかにすることで、今後の防集事業に示唆を得ることである。私たちは防集事業導入の契機となった1972年発生の昭和47年7月豪雨後に集団移転を行った事例の一つとして熊本県天草地域を対象に、国会議事録の分析と天草地域における移転実態と推移の分析を実施した。立法経緯は過疎地域における災害の発生によって、従来の過疎法に災害復旧の視点が加わり、補助率と補助対象が拡充した。実態について、移転先団地はほとんどが海面埋め立てで確保され、2年間で移転事業が完了、87.4%が同町内に居住を継続していた。これは移転先の用地確保に時間がかからなかったこと、通い農業の早期再開と職業斡旋のため短時間で近隣に居住可能だったためであると考えられる。高い国庫補助率を定めた防集事業創設の契機は、1970年の過疎法を踏まえて目指された「魅力あるまちづくり」にあった。東日本大震災後は防集事業導入地域において過疎化が進んでおり、今後は移転先を集約するなど、人口減少下における防集事業のあり方を改めて検討する必要がある。

  • 長野県伊那谷地域を事例として
    眞駈 来美, 荒木 笙子, 木村 伶皇, 秋田 典子
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 827-834
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は、1961年の三六災害を契機に集団移住を行なった長野県伊那谷地域における集団移住事業の導入経緯や理念、事業の実態を明らかにすることである。この事例が防災集団移転促進事業に関する法律の立法の契機となった。文献調査と国会議事録の分析、ヒアリング調査、現地調査を実施した結果、以下の3点が明らかになった。第一に、国会の議論を通じて、①災害が多く甚大であることから、根本的な災害対策実施のため、②限られた予算の中で費用を抑えること、以上より原型復旧ではなく集団移住が選択されて実施されたこと。第二に移住先の選択肢が多く、広域で移転を行ったにもかかわらず、2年というスピードで事業を実施でき、コンパクトシティの形成とも言える移住が確認されたこと。第三に、生活再建支援の充実である。これらは60年以上前の集団移住事業で取り組まれたもので、これまでその成果は十分に明らかにされていなかった。しかし、災害が頻発する昨今の状況を鑑みれば、今後の集団移転事業の推進に有益な示唆を与えるものと考える。

  • 実測結果との比較を踏まえた解析モデルを用いて
    山崎 潤也, 若月 泰孝, 飯塚 悟, 吉田 崇紘, 似内 遼一, 真鍋 陸太郎, 村山 顕人
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 835-842
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    気候変動に伴う気温上昇の影響は我が国でも顕在化しており、特に都市部における屋外環境の高温化が顕著である。本論文は都心市街地を対象とし、SSP・RCP別将来像における夏季温度分布の日変化をCFDにより解析した内容を報告する。その際、将来の市街地形態はエキスパートジャッジメントに基づいて決定し、気象条件は全球気候モデルより構築された将来の気候データを参照して決定した。本論文の既往研究からの発展性は以下にある。 1. 解析結果と実測結果の比較を踏まえた解析モデルを用意した。 2. 各解析を非定常で実施し、夏季日中の10時から18時の経時変化を把握した。 3. SSP1-1.9、SSP2-4.5、SSP5-8.5の3つの将来シナリオを用意した。 解析の結果、SSP1-1.9は気温上昇が小さい点、SSP5-8.5は建築物の高層化により日陰面積が拡大する点で他のシナリオよりも暑熱リスクが小さくなることが示唆された。これより、まちづくり分野における気候変動適応の推進に向けて新たな知見が創出されたものと結論づける。

  • 小川 花於里, 浅野 純一郎
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 843-850
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、地方都市の低専地域における生活サービス環境の実態を明らかにし、これを踏まえた上で居住誘導区域の妥当性を検証することを目的とする。地方の中核市・施行時特例市の内、低専住居専用地域の指定割合が平均以上の11市を対象とし、交通サービス環境と日用品購買環境の2軸から生活サービス環境を領域化することで、1)そのレベル差から都市を5分類できること、2)低専地域の指定パターンを一団性と分散度で規定すると、高頻度の公共交通サービスを提供する都市群では一団性が大きく分散度が小さい指定パターンとなる傾向が見られること、3)交通サービス環境が高頻度の路線は人口密度が高いメッシュにあり、日用品購買店があるメッシュも人口密度が高い場合であること等を実証的に明らかにした。さらに、典型地区の住民へのアンケート調査を通し、住民評価と照らして、本研究のサービス環境の捉え方が適当であることを確認した上で、サービス環境レベルからみた居住誘導区域の妥当性を検証した。

  • 天神明治通り地区を対象として
    葛川 匠, 高取 千佳
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 851-858
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は、街路空間において時間帯ごとに余白を抽出しそのポテンシャルを評価することで、滞留空間として利活用するための知見を得ることである。今回は、福岡市中心部の天神明治通り地区の街路および公開空地を対象地として調査を実施した。まず空間特性と通行量に基づいて時間帯別余白のポテンシャルの評価指標を構築し、対象地を6つのタイプに分類したうえで、街路空間を評価した。また、時間帯や曜日などの条件から通行者数とその属性の違いを分析し、通行者の傾向を把握した。これらのポテンシャル評価と実証実験による検証により、余白空間の充足度を滞留者割合として評価し、時間帯や通行者に応じた柔軟な場の機能提案が可能になった。

  • 今村 真樹子, 佐藤 宏亮
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 859-866
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    事前復興計画を検討する上では、その後の避難生活や復興住宅整備のあり方を含めた検討が必要になっている。本研究では、徳島県美波町木岐地区にて津波被災後の居住地選択に関するアンケート調査とヒアリング調査を実施し、住民らがどのような思考を持っているのか分析を行なった。 調査の結果としては、現在住んでいる木岐地区を第一希望とする住民が大半であり、場所やコミュニティへの帰属意識が居住地選択における重要な要素となっていることが明らかとなった。一方で、木岐地区での再建が叶わない場合の第二希望、第三希望へと至る思考プロセスについては、職業や年代によっても違い多様であった。そのため、被災後の集落の集約再編を想定する場合、世代や職業ごとに異なるニーズに応えるための選択肢を用意する必要がある。

  • 埼玉県日高市高麗地域を対象として
    松本 彩, 坂本 慧介, 別所 あかね, 横張 真
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 867-874
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、首都圏遠郊外におけるライフスタイル移住(LM)の定住プロセスを促進する社会・空間的要因を明らかにし、農村部への移住を中心とする従来のLMと比較して、遠郊外LM特有の定着プロセスを構造化することを目的とする。首都圏遠郊外の典型である日高市高麗地域におけるLM主体へのインタビューのテキストデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した結果、遠郊外LMには、「都市に在る家族や仕事などの社会的紐帯を保持」「地域コミュニティ活動への参加の自由」という、従来の農村LMとは異なる二つの特徴があることが示された。また、これらの特徴は、【多様な住居形態】【地域の自然や文化】【移住者中心のコミュニティスペース】【外部にひらけたコミュニティ】という4つの要因に起因するものであった。

  • 超高層の住宅と非住宅を比較して
    鄭 湉, 三浦 研
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 875-882
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    都市環境の整備と人口集中に対応する公開空地の確保を目的として、日本では1970年に割増容積率を獲得できる「総合設計制度」が創設され、1990年代以降、総合設計制度が適用された超高層の住宅が急増している。総合設計制度創設から半世紀経過し、適用件数が急増し、制度による公開空地の面積が大幅に拡大した。本研究では総合設計制度が適用された超高層住宅の公開空地に着目し、他の建物用途と比較して視線の抜けと構成の観点から公開空地の類型化を行うことを目的とする。公開空地の構成要素と構成パターンを抽出し、その特徴を明確にすることで、公開空地の創設基準を作成する際の基礎となる参考情報を提供し、ひいては公開空地の質的向上を意図している。

  • 札幌都心部大通公園周辺区域を対象として
    杉井 健, 村木 美貴
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 3 号 p. 883-890
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国では、オフィス、小売、家庭、交通などの都市活動が、CO2排出量の約50%を占めています。 この問題に対処するためには、特に高密度なエリアでのエネルギーの有効活用が必要です。 そこで、日本政府は、エネルギーネットワークが整備された公共空間におけるエネルギーセンターの整備を進めています。 本稿では、公共空間におけるエネルギーセンター整備を取り上げ、公共空間をエネルギーセンターに利用することでCO2排出削減をどのように確保できるかを明らかにしようとするものである。 まず、札幌市のエネルギー政策を概観し、いくつかのケースを想定してエネルギーセンターの建設による効果を分析した。 その結果、公園を利用したエネルギーセンター整備は、CO2排出量削減に有効であるが、イニシャルコストやエネルギー価格の高騰など、エネルギービジネスに悪影響を与えることがわかった。

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