日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
鶏の人工授精に関する血清学的研究
IV. 精子免疫の受精率におよぼす影響
阿部 恒夫大塚 茂細田 達雄
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1966 年 3 巻 2 号 p. 88-92

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抄録

1. 血中の精子凝集素が受精に影響を与えるか否かを知るために, 精液で静注免疫を行なった鶏 (12羽), 精液とアジユバント筋注免疫を行なった鶏 (8羽) と対照未処置鶏 (21羽) について精液1回注入後の受精率を比較した。その結果は精液注入後2~7日間の受精率は各区とも大差がなかったが, 8~14日間の受精率は抗体産生のもつとも著るしかった精液静注区の鶏において低い傾向が認められたが統計的有意差は示されなかった。
2. 抗体力価と受精率との関係については, 個体別にみると, 抗体力価の高いものが必ずしも低い受精率を示すとはかぎらなかったが, 抗体力価 (X), 2~7日間の受精率 (Y1) および8~14日間の受精率 (Y2) との間に, 次の関係式が導かれた。
Y1=-4.00X+86.29
Y2=-6.93X+59.63
3. 鶏精液で家免を免疫して作った異種免疫血清を各1ml, 24時間おきに2回静注した受働免疫鶏の受精率は対照鶏のそれと差が認められなかった。
以上の成績は, 鶏における精子免疫は, 受精率に対し若干の悪い影響を与えているようであるが, 統計的に有意なものでなかった。このことから実際の人工授精実施鶏にあるといわれている受精率の低下の原因として, 精子凝集の産生を第一義的要因としてあげることは因難と思われた。

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