日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
脳ペプタイドに関わる精神神経疾患の病態と治療的展望:ミトコンドリアの機能障害との関連
油井 邦雄
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 25 巻 2 号 p. 85-89

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抄録

本シンポジウムでは細胞死にかかわるペプタイドに関わるミトコンドリアの障害と精神神経疾患との関連,およびそれらの治療的展開を検討した。ミトコンドリアの膜上に存在する translocator protein(TSPO)はアポトーシスに関わり,そのリガンドは神経疾患の治療や診断に有益である。パーキンソン病はミトコンドリアの機能障害であり,PINK1 酵素がParkin にswitch onしてリン酸を付加することで不良ミトコンドリアへ呼び寄せて発病に至る。正しくスイッチが入るようにして,不良ミトコンドリアを分解に導くことが治療につながる。 MK-801 はミトコンドリア機能保護作用があり,この統合失調症モデルは p70S6K-S6 の回路におけるタンパクの形成の障害によるので,治療的展開に利用し得る。酸化ストレスによる脂質の過酸化過程はミトコンドリアの機能障害を惹起し,また,シグナル伝達機能を損ない,自閉症スぺクトラムの病態要因になるので,antioxidant が治療的に有益である。

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© 2014 日本生物学的精神医学会
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