2014 年 70 巻 2 号 p. I_899-I_908
腐食や疲労によって損傷を受けた鋼部材の簡易な補修方法として,当て板を接着して補修する方法が行われ始めている.一方,接着接合では当て板のはく離が懸念されるため,当て板接着補修を用いる際には,あらかじめはく離に対する照査を行う必要がある.はく離のように脆性的な破壊現象を評価する際には,エネルギー解放率が用いられる場合がある.しかし,これまでに提案されている当て板のはく離の評価に用いるエネルギー解放率は,はく離のモードが考慮されていない.本研究では,き裂が生じた鋼板に当て板を接着する場合を対象に,当て板端部およびき裂直上からはく離するときのモード別エネルギー解放率を算出する方法を提案した.モード別のエネルギー解放率は,当て板端部およびき裂直上の位置の接着剤に生じる垂直応力およびせん断応力から算出でき,垂直応力とせん断応力に対して高精度な解を与えることによって,モード別のエネルギー解放率とFEM解析値がほぼ一致した.