2011 年 67 巻 6 号 p. II_173-II_182
江戸城外濠は,東京都心における貴重な水辺環境空間であると同時に史跡として重要であり,近隣住民のみならず,東京近郊の市民からもその多様な価値が認められている.本研究では,一都三県の住民を対象としたアンケート調査データをもとに,空間構成要素と市民の特性に着目して,外濠の利用価値(直接・間接)および非利用価値(歴史的価値,遺贈価値,存在価値,生態系価値)の選好を評価した.その結果,全体としては,1)利用価値および非利用価値は見附より濠で高く評価されている,2)価値評価は利用頻度と正の相関がある,3)利用価値より非利用価値が高く評価されている,4)非利用価値の評価は居住地との関連はないことが明らかになった.外濠のこれからのあり方を考える上では,今後は,利用のための開発ではなく,非利用価値を高めるための施策(松・桜・石垣の保全等)が重要であると考えられた.