土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
環境システム研究論文集 第41巻
施設園芸栽培管理におけるバイオマス生産とGHG削減の相乗便益モデルの開発
志賀 俊成松井 孝典町村 尚中尾 彰文山本 祐吾
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2013 年 69 巻 6 号 p. II_189-II_197

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抄録

 農業では食料や資材などの人間の福利を支えるバイオマス生産が可能な反面,栽培管理に伴う多大な温室効果ガス(GHG: Green House Gas)の排出があり,生態系サービス利用と気候システム問題の間にトレードオフ構造が生じている.そこで,本研究ではそのトレードオフ構造が顕著である施設園芸を対象として,バイオマス生産とGHG排出削減の相乗便益モデルの開発を目的として,鑑賞用キク生産プラントを事例として温度および肥培管理の変更に伴うバイオマス生産とGHG排出の応答を分析し,栽培管理の最適化のモデルケースの導出を行った.分析では,DNDC (DeNitrification-DeComposition)モデルによる農地からのバイオマス生産量とGHG発生量の解析,温室暖房燃料消費試算ツールによる温度管理による暖房燃料消費量の解析,LCAツールであるMiLCAによる投入肥料製造に伴うGHG排出量の解析を統合して,様々な栽培管理ケースに対する炭素窒素収支の挙動を評価した.結果,対象プラントにおいて栽培管理の最適化により,現状から95%以上のバイオマス生産量を確保しつつ,GHG排出量を34.6%削減することが可能であるという結論を得た.今回構築した栽培管理の最適化のモデルケースは他の施設園芸においても有効に適用できると考えられる.

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© 2013 公益社団法人 土木学会
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