2015 年 71 巻 7 号 p. III_69-III_78
ミレニアム開発目標(MDGs)における安全な飲料水源へのアクセス率は,必ずしも水質的な安全性を反映していないため,途上国の水供給の安全性をより正確に把握し,安全性向上に向けた現実的な対策を講じる必要がある.本研究ではベトナム国ハノイ市において,アンケート調査(5地域)および水質調査(12地域)を実施し,「改善された水源」を利用している世帯における安全な飲料水源へのアクセス率を推定し,さらに近年普及が進む家庭内での処理(Household Water Treatment, HWT)による安全性の改善効果を評価した.その結果,安全な飲料水源へのアクセス率は都市・郊外・農村部でそれぞれ60%,15%,52%と郊外で低く,HWTを考慮するとそれぞれ13%,20%,8%改善することから,今後HWTの役割が重要となることが明らかとなった.