日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
総説
リウマチ滑膜に対する遺伝子導入システムの現状と展望
中里 款野々村 美紀宮坂 信之上阪 等
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 31 巻 1 号 p. 17-22

詳細
抄録

  関節リウマチ(RA)に対する新たな治療法として,罹患関節の滑膜に直接的に抗リウマチ分子を発現させる遺伝子治療が検討されている.また一方で,滑膜細胞に対する遺伝子導入は治療標的分子の解明においても有用なツールであることは言を待たない.これまでアデノウイルスベクターなど増殖性の低い細胞にも導入可能な感染性ベクターを中心に病変滑膜に対して有用な導入系が構築されているが,本稿では関節滑膜における各種の遺伝子導入法について特性と現状を総括し,その有用性について我々の研究結果を絡めて論ずる.
  現時点における遺伝子導入系はウイルスベクターと非感染性ベクターの二種に大別されるが,2007年にはアデノ随伴ウイルスベクターを用いた関節リウマチの治験が行われており,ウイルスベクターの実用化に向けた強いアプローチとなっている.一方で非感染性ベクターについても有用性の高い新規担体が開発されつつある.いずれの導入系も臨床レベルの実用化には今後も検討を必要とするが,遺伝子治療は “Bench to Clinic and Clinic to Bench” を理想的に体現しうる技術であり,今後の応用が期待される.

著者関連情報
© 2008 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top