日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
総説
Pregnancy associated progenitor cellsによる臓器修復の可能性
須波 玲多賀谷 光平田 修司
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 33 巻 6 号 p. 287-292

詳細
抄録

  母体の血液中および骨髄中には多分化能を有する胎児由来細胞(pregnancy associated progenitor cells : PAPCs)が存在し,母体の免疫学的排除を受けることなく長期にわたって生存することでfetal cell microchimerism(以下FCM)が形成される.PAPCsの生理的意義について明らかにするために母体の臓器傷害との関連について検討を行った.EGFP transgenic mouseオスとwild type mouseメスとを交配させ,妊娠6日目に子宮を摘出した.摘出後60日目にstreptozotocin(以下STZ)投与による薬物性臓器傷害モデルと虚血性臓器傷害として心筋梗塞モデルと脳梗塞モデルを作成した.傷害臓器における胎仔細胞の有無ならびに,その形態について定量的PCR法および蛍光顕微鏡を用いて解析した.子宮摘出後60日目の時点では母獣骨髄以外の諸臓器からは胎仔細胞は検出されなかった.臓器傷害モデルでは骨髄のみならず,傷害臓器において特異的に胎仔細胞が検出された.組織学的には傷害臓器に特異的な単核のEGFP陽性細胞が検出された.以上の結果から,FCMの由来となる母体骨髄に生着した胎仔細胞は,免疫学的排除を受けることなく母獣の傷害臓器に特異的な集積を示すことから,これを修復すべく機能している可能性がある.

著者関連情報
© 2010 日本臨床免疫学会
次の記事
feedback
Top