日本臨床免疫学会会誌
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総説
抗ガングリオシド抗体—ギラン・バレー症候群とその関連疾患における病態への関与—
海田 賢一楠 進
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2011 年 34 巻 1 号 p. 29-39

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抄録

  ガングリオシドはシアル酸をもつ神経系に豊富なスフィンゴ糖脂質であり,細胞膜上でクラスターを形成しマイクロドメインを構成している.ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome, GBS)において抗ガングリオシド抗体は発症および神経症状を規定する因子として作用している.GM1, GD1a, GalNAc-GD1aに対する抗体は純粋運動GBSに相関し軸索障害優位の電気生理所見を示す.抗GM1抗体はRanvier絞輪軸索膜上でNaチャンネルクラスターを補体介在性に障害し,抗GD1a抗体,抗GQ1b抗体は補体介在性に運動神経遠位および終末部軸索を障害することが実験的に示されている.古典的経路優位の補体活性化が推測され,これらの障害は補体活性化阻害剤で抑制される.一部の抗ガングリオシド抗体は補体非介在性にCaチャンネル機能障害をきたす.近年2種の異なるガングリオシドからなるガングリオシド複合体(GSC)に対する抗体がGBSの一部に見いだされ,抗GD1a/GD1b抗体陽性GBSは重症度の高さと相関している.またGQ1bやGT1aに対する抗体が90%以上に認められるフィッシャー症候群でも,約半数ではGQ1bまたはGT1aを含むGSCにより特異性の高い抗体が陽性である.抗ガングリオシド抗体の標的部位への到達性,結合活性は標的部位の糖脂質環境が影響し,同抗体の病的作用の発現を規定する可能性がある.本稿では抗ガングリオシド抗体,抗GSC抗体の病的作用について最新の知見を概説した.

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© 2011 日本臨床免疫学会
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