日本透析医学会雑誌
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原著
血液透析患者のヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(N-terminal fragment of brain natriuretic peptide precursor:NT-proBNP)濃度に対する内臓肥満の影響
蔦谷 知佳子對馬 惠寺山 百合子山谷 金光齋藤 久夫舟生 富寿
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2012 年 45 巻 6 号 p. 467-474

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抄録

心不全マーカーであるヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(N-terminal fragment of brain natriuretic peptide precursor:NT-proBNP)濃度は一般住民および慢性心不全患者において肥満と関連し,BMIと負相関すると報告されている.しかし,透析患者ではBMIの高値例は少なく,NT-proBNPとBMIの関連性は明らかでない.著者らは,透析患者におけるNT-proBNP濃度が内臓肥満に影響されているか否かについて,内臓肥満の指標に内臓脂肪面積を用い,心筋トロポニンT(cardiac troponin T:cTnT)を介在因子として検討した.対象は血液透析患者80例.本研究では内臓肥満の基準として,腹部CTにより測定した内臓脂肪面積(visceral fat area:VFA)を用い,VFA≥75cm2を内臓肥満群とした.非内臓肥満群のNT-proBNPは中央値7,155pg/mL,cTnTは中央値0.028ng/mLであったのに対し,内臓肥満群のNT-proBNPは3,604pg/mL,cTnTは0.038ng/mLであった.内臓肥満群のNT-proBNP濃度は非内臓肥満群にくらべ有意に低値であったが,cTnT濃度には2群間で差がなかった.非内臓肥満群においてNT-proBNPはcTnTと有意な正相関(r=0.513,p=0.0003)を認めたが,内臓肥満群では相関性が認められなかった.以上より,透析患者においてNT-proBNP濃度は内臓肥満に影響されており,NT-proBNP濃度は内臓肥満を考慮してその値を解釈する必要があると思われた.

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© 2012 一般社団法人 日本透析医学会
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