日本透析医学会雑誌
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症例報告
全身性強皮症にMPO-ANCA陽性の半月体形成性糸球体腎炎を合併し,腹膜透析に導入した若年女性例
高橋 聖子八幡 真弓中屋 来哉岩動 一将佐久間 芳文森 康紀佐熊 勉相馬 淳
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2012 年 45 巻 7 号 p. 571-576

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抄録

症例は23歳,女性.2008年8月にRaynaud現象,易疲労感等を認め,手背皮膚硬化,抗トポイソメラーゼI抗体陽性と併せて,近医で強皮症と診断された.2010年11月末から嘔気,嘔吐,食欲不振が出現し,12月中旬に近医を受診したが,BUN 92.1mg/dL,Cr 12.76mg/dLと高度の腎機能障害が認められたため当科に紹介入院となり,直ちに血液透析を開始した.著明な高血圧がみられたため,当初は強皮症腎クリーゼが疑われたが,尿蛋白量6.8g/gCr,尿中赤血球50-99/HPFと尿異常が高度であり,またmyeloperoxidase-antineutrophil cytoplasmic antibody(MPO-ANCA)が78EUと陽性であった.確定診断のために腎生検を行った結果,Pauci-immune型半月体形成性糸球体腎炎と診断された.メチルプレドニゾロン1日500mgのパルス療法を施行後,PSL 30mg/日の内服を行ったが腎機能は改善せず,本人の希望により維持透析療法として腹膜透析が選択された.当初夜間自動腹膜透析を行ったが,総クレアチニンクリアランス(Ccr)は25.0L/weekと透析効率が不充分であった.そのため,連続携行式腹膜透析(CAPD)に変更し,総Ccrは35.0L/weekとある程度透析量を確保できた2011年3月下旬に退院となった.除水量は1日1,000~1,200mLと維持され,2011年6月の腹膜機能平衡試験はD/P Cr 0.5,D/D0 Glu 0.5といずれもLow-Averageであった.しかし,2012年1月頃より除水量が1日800mLに低下し,体重の増加がみられたため,夜間のイコデキストリン透析液使用を開始した.その結果,再び1日1,000~1,200mLの除水量の確保が可能となり現在まで安定してCAPDが行われている.強皮症患者にMPO-ANCA陽性の半月体形成性糸球体腎炎を合併したとの報告は多数あるが,強皮症患者で腹膜透析導入を行った報告は少ないため報告の価値のある症例と考えられた.

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© 2012 一般社団法人 日本透析医学会
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