日本環境感染学会誌
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報告
職員のインフルエンザA(H1N1)2009pdmウイルスワクチン接種前後の抗体保有に関する検討
立花 幸晃片岡 朋江志賀 誠
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2011 年 26 巻 6 号 p. 374-377

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抄録

  国内でのA(H1N1)2009pdmウイルスワクチン(以下,新型インフルエンザワクチン)の成人における有効性については78.6%と報告されたのを受けて,当院職員のワクチン接種前後での抗体保有状況を調査する目的で,新型インフルエンザワクチン接種日および接種4週後に同意の得られた62名の職員より採血し,HI抗体価の測定を実施したところ,有効防御免疫の指標とされている1:40以上のHI抗体価をワクチン接種後に示したのは49名(79%)であった.接種前の抗体価に関しては,12名(19%)に1:10以上の抗体保有が確認され,1:40以上を示したものが4名であった.今回の検討では,ワクチン接種後の有効抗体保有率は国内臨床試験結果にほぼ一致する結果で,接種前に1:10以上の抗体保有者を12名(19%)認めたが,パンデミックインフルエンザ(H1N1)2009(以下,新型インフルエンザ)の罹患エピソードはなく,不顕性感染の可能性も考えられた.有効抗体保有者のHI抗体価は概ね1:40~1:160に集約され,抗体検査実施群からの罹患者は認めなかった.職員全体としても流行期の罹患届出件数は10件にとどまり,院内でのアウトブレイクが生じなかった要因はワクチンの有効性だけではなく,新型インフルエンザに対しての意識が従来の季節性インフルエンザよりも高く,手指衛生の強化,マスク着用などの院内感染対策の励行にあると考えられた.

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© 2011 一般社団法人 日本環境感染学会
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