日本食品微生物学会雑誌
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原著
富山県における市販魚介類および漁港海水の腸炎ビブリオ菌数の推移と食中毒事例数との相関(1979~1995, 2008~2012年)
金谷 潤一磯部 順子木全 恵子清水 美和子佐多 徹太郎綿引 正則
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2014 年 31 巻 2 号 p. 93-99

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抄録

本研究では,1999年および2001年に出された腸炎ビブリオ食中毒発生予防に関連する通知が市販魚介類の腸炎ビブリオ菌数に与えた影響を調査するため, 1979~1995年および2008~2012年にかけて市販魚介類の腸炎ビブリオ菌数を,2008~2012年には漁港海水の腸炎ビブリオ菌数,thermostable direct hemolysin (tdh) gene, tdh保有腸炎ビブリオO3 : K6の検出率を調査した.その結果,1979~1995年の魚介類における腸炎ビブリオ検出率は66.3%(666/1,005検体),幾何平均菌数±SD (log10/100 g) は2.73±1.27であったが,2008~2012年は50.6%(119/235検体)および1.89±0.44であり,有意に低くなった (p<0.05; Student's t test).また,1979~1995年は平均気温が20℃未満のときは58.4%および2.48±0.98, 20~25℃のときは67.6%および2.73±1.17, 25℃より高いときは70.8%および2.95±1.23と,平均気温が高くなるにつれて高くなった.一方2008~2012年においては,平均気温と陽性率,幾何平均菌数のいずれも有意な差は見られなかった.漁港海水の腸炎ビブリオ検出率は86.9%(153/176検体)であり,幾何平均菌数は1.07±0.53であった.そのうち20.5%(36/176検体)からtdh遺伝子が検出され,2検体からtdh保有腸炎ビブリオO3 : K6が分離された.本研究によって,夏季の漁港海水には依然としてTDH産生性を含む腸炎ビブリオが広く分布しているが,魚介類の洗浄における殺菌海水の導入や低温輸送などの衛生管理によって,近年の魚介類の腸炎ビブリオ菌数および検出率は減少し,結果として腸炎ビブリオによる食中毒を減少させることができていると考えられた.

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© 2014 日本食品微生物学会
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