日本集中治療医学会雑誌
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原著
Systemic inflammatory response syndrome(SIRS)症例におけるE-セレクチンと臓器障害に関する臨床的検討
黒木 千晴垣花 泰之中原 真由美安田 智嗣村山 裕美下坂 美佐子今林 徹上村 裕一
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2010 年 17 巻 4 号 p. 491-498

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抄録

接着分子の一つであるE-セレクチンと臓器障害との関連を調べるため,ICU入室時に全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome, SIRS)の診断基準を満たし人工呼吸管理を要した52例を対象に,ICU入室24時間以内の可溶性E-セレクチン値とSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアおよび各臓器別障害との相関関係を後ろ向きに検討した。可溶性E-セレクチン値とSOFAスコアとの間には有意な相関関係が認められ(P=0.0024),各臓器別検討では呼吸障害(P/F ratio)(r=0.511, P<0.0001)に有意な相関が認められた。一方,acute lung injury/acute respiratory distress syndrome(ALI/ARDS)の病態識別能に関して,可溶性E-セレクチン,白血球数,CRP,顆粒球エラスターゼによるフィブリン分解産物(elastase digests of cross-linked fibrin, E-XDP)を検討したところ,可溶性E-セレクチンが肺障害に対して感度・特異度とも高いことが示された。以上の結果より,SIRS症例の肺障害発症に関して,接着分子の一つであるE-セレクチンが深く関与している可能性が示唆された。

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© 2010 日本集中治療医学会
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