日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
塩酸バンコマイシンの経口投与により血清濃度の高値が持続した2症例
入江 洋正松本 聡兼清 信介松田 憲昌若松 弘也松本 美志也坂部 武史
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2010 年 17 巻 4 号 p. 519-524

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抄録

塩酸バンコマイシン(vancomycin, VCM)は,経口投与では腸管粘膜から吸収されないため血中への移行はないとされるが,血清濃度が上昇した2症例を経験した。【症例1】61歳の女性。敗血症,急性腎傷害,Clostridium difficile関連疾患(Clostridium difficile associated disease, CDAD)で,VCMの経口投与と静脈内投与,持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)を行っていた。ICU入室4日目にトラフ値が33.7μg/mlであったためVCMの静脈内投与を中止したが,血清濃度の高値が持続した(中止2日後43.5μg/ml,7日後45.0μg/ml)。【症例2】63歳の女性。敗血症,CDAD,急性腎傷害でVCMの経口投与,CHDFを行っていたが,投与10日目のVCM血清濃度は10.3μg/mlであった。2症例とも腸管粘膜傷害と腎機能障害を合併していたため,VCMの腸管粘膜から血中への移行,腎からの排泄障害によって血清濃度が上昇したと考えられた。

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© 2010 日本集中治療医学会
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