塩類集積が問題となっている中国東北部にある東北林業大学試験地において現地調査と1年間の観測を行った.現地の年降水量は356mmで,Thornsweit法で推定した夏季の可能蒸発量は540mm程度であった.土壌は軽埴土あるいは重粘土である.調査地では地下水位が浅いにも拘わらず土壌表層に塩類が集積する領域と塩類集積が無く植生のある領域が隣接してパッチ状に存在していた.浅層地下水位は,冬季から5月下旬まで凍土がある期間は降雨に応答しない一方,凍土の無い6月から8月の間,表層近傍の土壌水分が比較的高い時に,降雨深に対して7~12倍の地下水位上昇を示した.浅層地下水には,Na,Ca,Mgが7:3:2の割合で存在したが,塩類集積区では地表面に,塩の集積の無い植生区では深さ40cm以深にNaが選択的に集積していた.植物の根の呼吸による土壌CO2分圧の上昇に伴う炭酸塩の溶解や地下水位の上下動が現地の塩類集積状況に寄与している可能性が考えられる.