農業農村工学会論文集
Online ISSN : 1884-7242
Print ISSN : 1882-2789
ISSN-L : 1882-2789
研究報文
灌漑用揚水水車の最近30年間における存廃要因に関する検討
廣瀬 裕一小林 久牧山 正男後藤 眞宏上田 達己
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 83 巻 3 号 p. II_43-II_53

詳細
抄録

本研究は, 揚水水車に関する現地での存廃状況の確認と存廃理由の聞き取り, 諸元の測定を通じ, 今日においても揚水水車が灌漑を目的として利用され続けるための条件を明らかにした.灌漑目的での利用は1980年代のおよそ3割に減少したが, 新設された事例も見られた.聞き取り調査の結果, 廃止された理由としては, 上位技術への更新や, 受益地を水田以外に変更したこと, 更新が不可能であることが, 一方存続理由は費用の都合や, 用水路を堰上げずに分水可能であることが, それぞれ挙げられた.また諸元ごとに存廃の差を見ると, 直径と受益水田面積で両者間に有意な差が見られた.以上から, 揚水水車が今日においても灌漑目的で利用されるための条件は, 直径が1.5~2.5m程度で利用が可能であることに加え, 燃料代の軽減や受益地から得られる収益等で規定される費用上の利点を持つことと考えられた.

著者関連情報
© 2015 公益社団法人 農業農村工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top