昭和医学会雑誌
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麻酔犬における血液希釈状態下の臓器血流とドパミン, ドブタミンの効果
毛利 祐三小堀 正雄根岸 秀細山田 明義
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1996 年 56 巻 1 号 p. 105-111

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抄録

全身麻酔下の雑種成犬15頭に, サリンヘス (R) を用いた等量血液希釈を行い, ドパミン (DOA) 群およびドブタミン (DOB) 群の2群に分け, それぞれ5μg/kg/min (S5) , 10μg/kg/min (S10) 投与したときの, 循環呼吸動態および臓器血流の変化を検討した.臓器血流の測定は水素ガスクリァランス法を用い, 測定部位は腎臓皮質 (RCBF) , 腎臓髄質 (RMBF) , 肝臓 (LBF) とし各臓器血流分布率 (%RCBF, %RMBF, %LBF) も求めた.等量血液希釈により, 両群とも左室内圧最大変化率 (LVdp/dtmax) 上昇, 心係数増加, 体血管抵抗低下を認め, 通常認められる血液希釈の代償作用を示した.臓器血流は, 血液希釈によりRMBF, LBFで有意な上昇を認めたが, RCBFでは有意な変化は無く, %RCBFの有意な低下を認めた.次に血液希釈状態下, DOA, DOBの効果を検討した.DOA群はS5, S10でLVdp/dtmaxが有意に上昇し, DOB群はS5, S10で心拍数, LVdp/dtmaxの有意な上昇を認めた.血液希釈状態で心拍出量を維持するため, 両薬物が, 心収縮力の増強に有利に働くと思われた.腎臓血流では, DOA群はRMBFがS5で有意に増加し, %RMBFで増加傾向を認めた.DOB群はRCBF, RMBFとも変化がなかったが, %RCBFで有意な低下を示した, 肝臓では, 両群とも血流の増加は認められず, 分布率は低下傾向を示した, 以上の結果より, 血液希釈状態でのDOAは, RMBFの増加を来すが, 腎臓内血流分布の改善には有効でなく, DOBでは, 心拍出量増加を示すものの, それに伴う腎臓肝臓血流増加は認められないことが示唆された.

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