日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
Print ISSN : 0915-5988
ISSN-L : 0915-5988
原著
当科における口腔扁平上皮癌に対するドセタキセルを主体とした放射線併用超選択的動注化学療法の効果と副作用の検討
菅野 真人川村 貴史松本 誠阿部 亮輔長澤 大古城 慎太郎八木 正篤水城 春美泉沢 充中里 龍彦
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 21 巻 1 号 p. 37-43

詳細
抄録

今回われわれは,放射線同時併用超選択的動注化学療法を施行した口腔扁平上皮癌症例について,その治療効果と副作用について検討した。対象は,2004年1月から2007年6月までに当科において放射線併用超選択的動注化学療法(Seldinger法)を施行した口腔扁平上皮癌22例であった。原発部位は下顎歯肉8例,舌が6例,上顎歯肉と頬粘膜がそれぞれ4例で,病期分類はStage Iが1例,IIが6例,IIIが2例,IVが13例であった。投与薬剤は,ドセタキセルの動注,CDDPの動注もしくは静注,5-FUの静注の3剤併用を基本とし,放射線量は30~60Gyであった。治療効果は,18例(81.8%)でCRであり,3例(13.6%)でPR,判定不能が1例(治療に関連する合併症で死亡)であった。PRの3例では手術が行われ,病理組織学的治療効果は3例ともにGrade IV(大星―下里分類)であった。再発は21例中2例(9.5%)で認められた。治療に伴うGrade 3以上の有害事象として,リンパ球減少77.3%,白血球減少54.5%,好中球減少36.4%,ヘモグロビン減少22.7%,血小板減少9.1%,感染が27.3%にみられた。特にリンパ球減少が多くの症例で認められ,発熱や感染に関連することが推測された。現在の所,リンパ球減少に対する有効な薬剤はなく,本治療法施行時にはリンパ球数の監視および積極的な栄養管理による免疫能の維持が必要と考えられた。

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
前の記事 次の記事
feedback
Top