脳卒中
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早期公開論文
早期公開論文の36件中1~36を表示しています
  • 内沢 隆充
    論文ID: 11224
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/03/18
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    頭部単純CT画像の脳実質部分のCT値は,血液hemoglobin(Hb)濃度と直線的に相関している.脳CT値は脳Hb量に比例し,脳Hb量は脳血液量cerebral blood volume(CBV)に脳血液Hb濃度を乗ずることで得られる.つまり,脳Hb量はCBVと血液Hb濃度に直線的に相関し,頭部単純CT画像に反映されている.血液Hb濃度は個人ごとに一定であるので,頭部単純CT画像のCT値はCBVに比例している.しかし,CBVの変化によるCT値の変化はごくわずかであり,雑音と視認限界のため変化を認識することはできない.そこで,CBVの変化を可視化する画像処理法を考案し,様々な病態のCT画像を観察した.超急性期心原性脳塞栓症では,CBVの低下範囲から虚血範囲を確認できる可能性がある.慢性脳虚血症例では,自動調節能によるCBVの変化から範囲と病期を推察可能と思われる.頭部単純CT画像の画像処理と臨床応用に関し,概説した.

  • 桐原 佳裕, 石山 大介, 鈴木 健太郎, 沓名 章仁, 木村 和美
    論文ID: 11222
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/03/13
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    【目的】急性期脳梗塞患者における便秘と日常生活活動能力との関連を検討した.【方法】デザインは,後ろ向きコホート研究とした.対象は,2019年4月から2020年12月に日本医科大学付属病院Stroke Unit(SU)に入院した急性期脳梗塞患者144名とした.アウトカムは,退院・転院時のBarthel Index(BI)とした.便秘は,3日以上排便がない場合と定義し,入院後1週間での便秘の有無を調査した.統計解析は,従属変数を退院・転院時BIとした重回帰分析を実施した.【結果】年齢の中央値(四分位範囲)が74(60–82)歳,男性64%,BIの平均値は63.4点であり,便秘の発生率は54%であった.重回帰分析の結果,便秘は,退院・転院時BIとの有意な関連が認められた(β=−0.137, P=0.047).【結論】急性期脳梗塞後の便秘は,転退院時のADLとの関連がみられた.

  • 林 杏介, 森川 剛, 久保田 健, 岡澤 香津子, 荒牧 佳吾, 森田 有紀, 岡野 美津子, 塚田 晃裕, 山嵜 正志
    論文ID: 11219
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    【目的】虚血性脳卒中患者の脂質異常症管理にスタチンが推奨されるが,超高齢者における有効性と安全性は不明であり,後ろ向き研究を企図した.【方法】2017年1月~2021年12月にアテローム血栓性脳梗塞もしくはラクナ梗塞で入院した80歳以上で,発症1年間の経過がわかる例を調査した.退院時転帰,入院日数,LDL-Cおよびスタチン開始48週間の有害事象を収集した.【結果】全102例中,スタチン投与群は33例,非投与群は69例だった.スタチン投与群は退院時mRS 2.5で退院時死亡はなく,非投与群より入院期間が有意に短かった.入院時のLDL-Cは115 mg/dl程度で,スタチン投与群は12週後に84 mg/dlまで低下した.スタチン投与後48週間で主な有害事象はなかった.【結論】スタチン治療を開始できた高齢患者は,退院時の脳血管障害による運動機能等の障害は軽度で,有効性について検証を継続する価値がある.

  • 山田 健嗣, 吉野 義一, 金岡 杏純, 木下 裕貴, 伊古田 雅史, 内山 拓, 杣 夏美, 大川 敦也, 草鹿 元
    論文ID: 11213
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/02/26
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    症例は43歳男性.突然の頭痛にて発症し,CTにてくも膜下出血と診断した.脳血管撮影にて両側中大脳動脈はもやもや血管を伴い狭窄・閉塞しており,前交通動脈には5 mm大の動脈瘤を認め,出血源と判断した.前交通動脈瘤に対し緊急でコイル塞栓術を施行し,合併症なく経過,発症1カ月後にmRS 0にて自宅退院となった.もやもや病は両側内頚動脈終末部の狭窄がもやもや血管の新生を伴いながら進行するが,本症例は両側中大脳動脈に病変が限局し,前方循環の血流が前大脳動脈に集中したと予想される.後方視的に行ったCFD解析でも,中大脳動脈の閉塞に伴い,前交通動脈への血行力学的なストレスの増大が確認された.もやもや病の進行過程において部分的な血管閉塞を生じた際は,非閉塞血管へ血行力学的ストレスが局所的に増大し,脳動脈瘤の形成・破裂・再発に影響を与えるものと考えられ,治療にあたっては留意する必要がある.

  • 岩田 牧子, 川口 正二郎, 田中 雄一郎
    論文ID: 11216
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/02/21
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    症例は,運動後の雷鳴頭痛で当院を初診した56歳女性.頭部CTで9年前に他院で治療された陳旧性脳梗塞を認めた.鎮痛剤を処方したが,頭痛は改善せず6日後に再診.MRIで新規病変はなく,MRAでは左MCAの描出が不良であった.描出不良は陳旧性脳梗塞によると解釈した.頭痛は継続し,11日後に再検したMRIで新規脳梗塞があり,入院となった.脳血管撮影で重複中大脳動脈の存在と,MCA主幹の血管径の不整が判明した.以上より頭痛は,MCA主幹の解離により遅発性に脳梗塞を生じた可能性が考えられた.当初MRAでMCA主幹の描出が重複中大脳動脈より不良であったため,重複中大脳動脈を本来のMCAと誤認したことで診断が混乱した.非典型的な頭痛や脳梗塞例では,脳血管の破格も念頭に置くべきである.

  • 酒井 紫帆, 前田 拓真, 佐藤 大樹, 鈴木 海馬, 水野 玲奈, 佐藤 政哉, 菅澤 真, 吉冨 昌太, 小林 広樹, 矢作 宜之, 古 ...
    論文ID: 11221
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/02/19
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    小児のpial arteriovenous fistula(AVF)は稀な疾患であるが,静脈圧の上昇により頭蓋内出血を来し得るため,予防的治療が考慮される.治療待機中にくも膜下出血を呈した,小児pial AVFの1例を報告する.症例は6歳女児,頭痛精査で施行されたMRIで脳幹背部に異常血管を指摘された.DSAを施行し,左後下小脳動脈を流入血管,深部静脈を流出血管とするpial AVFの診断となった.Drainerはvarixを伴っており,出血リスクが高いと考えられた.脳血管内治療の方針としたが,待機中に意識障害を伴うくも膜下出血で緊急入院となった.再出血予防と減圧のため,直達術によるshunt離断とvarixの摘出を行った.周術期合併症はなく,mRSスコア1で自宅退院となった.Pial AVFに対する直達術においては,血管構築の十分な理解とshunt pointの確実な閉塞が重要と考えられる.

  • 正村 啓二郎, 工藤 誠也, 南部 育, 宮下 勝吉, 東馬 康郎
    論文ID: 11214
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/02/09
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    症例は43歳男性.突然の激しい頭痛の後,てんかん重積を起こし救急搬送された.CTで左シルビウス裂を中心にくも膜下出血および左頭頂葉に低吸収域を認めた.脳血管撮影上,出血源となる動脈瘤や血管奇形は認めなかったが,左頭頂葉に濃染像と,同部位に早期静脈描出を認めた.左頭頂葉病変は造影MRIでリング状の増強効果を呈し,これらの画像所見から悪性腫瘍が疑われたため,開頭腫瘍摘出術を施行した.病理診断にて悪性神経膠腫と診断され,術後化学放射線療法を施行した.稀ではあるが,くも膜下出血の原因として悪性神経膠腫の可能性があることを念頭に置くべきと考えられた.

  • 鈴木 龍太
    論文ID: 11230
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/02/09
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  • 神津 実咲, 佐藤 健朗, 三森 雅広, 奥村 元博, 梅原 淳, 井口 保之
    論文ID: 11215
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/01/31
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    症例は75歳男性.突然の回転性めまいと歩行障害で来院した.来院時より高CO2血症を認め,神経学的には構音障害,左右注視眼振,左顔面麻痺,嚥下障害,左カーテン徴候,左顔面と頸部以下右半身の表在感覚低下,左上下肢小脳性運動失調,左Horner徴候を認めた.頭部MRIでは,延髄左外側から橋下部左背側に及ぶ垂直方向の長大な梗塞を認め,MRAでは左椎骨動脈の閉塞を認めた.発症約9時間後に誤嚥性肺炎を生じ,発症約24時間後の夜間に突然の呼吸停止を来し人工呼吸器管理となった.延髄外側梗塞の中でも閂レベルよりも頭側に病変を含む場合,呼吸制御機構が障害され,かつ誤嚥を生じやすいとされる.本例は垂直方向に長大な病変を呈し,発症早期に重篤な中枢性呼吸障害と誤嚥性肺炎を伴った.延髄外側梗塞に伴う呼吸不全のメカニズムを考える上で貴重な1例と考え報告する.

  • 忽那 史也, 荒田 昌彦, 足利 裕哉, 佐藤 和明, 徳田 昌紘, 岩永 洋
    論文ID: 11217
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/01/31
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    症例は53歳女性.関節リウマチ診断から2カ月後に一過性の右上下肢麻痺,失語を発症した.症状が繰り返すことから一過性脳虚血発作(transient ischemic attack: TIA)が疑われ,精査目的に当科へ入院した.頭部MRIで,左前頭葉および頭頂葉の髄膜に造影効果を伴う拡散強調画像/FLAIR画像高信号を認め,関節リウマチの既往からリウマチ性髄膜炎が疑われた.髄液検査で,抗環状シトルリン化ペプチド抗体ならびに抗体価指数の上昇を認め,リウマチ性髄膜炎と診断した.ステロイドによる治療反応性は良好で,症状の再燃はなく,画像所見も改善が得られた.臨床経過ならびに診察所見のみでの診断は困難であり,頭部造影MRIや髄液中抗環状シトルリン化ペプチド抗体の測定が診断に有用であった.リウマチ性髄膜炎ではTIA様症状を呈することがあり,TIA mimicsとして念頭に置く必要がある.

  • 立澤 奈央, 森 達也, 山下 俊輔, 松木 泰典, 池田 充, 森川 雅史, 安部 裕子, 藤田 敦史, 篠山 隆司
    論文ID: 11205
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/01/23
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    潰瘍形成プラークに対する頚動脈ステント留置術後には,ステント外に造影剤が漏出するステント外残存潰瘍(residual ulceration: RU)を認めることが多い.RUは半年後に約半数が消失するが,術後脳塞栓症の原因となる可能性について報告されている.本研究では,潰瘍病変に対してCASPER stentを使用した場合のRU消失率および塞栓性合併症の発生率を検討した.2021年4月から2022年3月までの期間で,潰瘍形成を認めた11症例を対象とした.全例にCASPER stentを用い,術後3カ月時点のDSA所見を評価した.10例にRUを認め,3カ月後のRU消失率は78%であった.1年間の追跡で症候性脳梗塞の発生例はなかった.潰瘍病変に対するCASでは,CASPER stentの使用によりRUの高い消失率が得られた.

  • 大貫 亮慶, 小林 祐太, 亀野 力哉, 藤森 大智, 宗像 良二, 堀内 一臣, 生沼 雅博, 渡邊 善一郎
    論文ID: 11197
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/01/19
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    50歳代女性.午睡後の左上肢感覚障害で受診.MRI, MRAで右M2領域の急性期脳梗塞と診断,t-PA, 血栓回収は適応外であり,保存的加療.翌日MRAで閉塞部位は再開通していた.経胸壁心エコー,体幹部CT, ホルター心電図で塞栓源や不整脈なし.頚部MRAで有意狭窄なく,頚動脈エコーは未施行.ホルモン,各種抗体検査で異常なし.塞栓性梗塞とてDOAC開始となり,軽度感覚障害あるも独歩自宅退院.3カ月後同部位に脳塞栓が再発し入院.頚動脈エコー,CTAより右内頚動脈にcarotid web(CW)が疑われ脳血管撮影を施行,同部位に造影剤の鬱滞が見られた.CWに起因する再発塞栓性梗塞と診断,DAPTとし後日頚動脈ステント留置術を施行.その後は再発なく経過している.CWに起因する脳梗塞は再発リスクが高いとされる.本症例は抗凝固療法中に再発を来しており,若年の脳塞栓ではCWを見逃さず,適切に治療することが重要と思われた.

  • 吉田 研二, 柳原 普, 千田 光平, 赤松 洋祐, 小笠原 邦昭
    論文ID: 11211
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/01/16
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    症例は52歳男性.37歳時に頭痛発症の左椎骨動脈解離に対し,保存的加療を受けた.左椎骨動脈の紡錘状拡大は残存したが,画像的変化は認めず経過していた.51歳時に進行性胃癌に対し,切除術を施行した.術後はTegafur/Gimeracil/Oteracil配合剤による化学療法を行ったが,複数の肝転移が明らかとなり,Ramucirumab+nab-paclitaxel併用療法へ変更した.間もなく強い頭痛を自覚し,頭部MRIで対側の右椎骨動脈に新たな動脈解離が明らかとなった.解離以降の右椎骨動脈は閉塞しており,また出血や虚血巣を認めなかったため,保存的に加療した.RAMおよび,同様の抗VEGF作用を有する分子標的治療薬のbevacizumabには大動脈解離の報告が散見されるが,椎骨動脈解離を発症した報告はない.一側の椎骨動脈解離の既往がある症例の対側椎骨動脈解離発症に,RAMの関連が疑われた.

  • 中島 一夫, 仲 元司, 西山 修, 高濱 充貴, 西森 栄太
    論文ID: 11168
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/27
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    【目的】単一施設での心房細動(AF)患者の死亡率の経時的変動と脳梗塞死に影響を及ぼす因子を,後ろ向きに検討した.【方法】AF患者を抗凝固療法黎明期(1983年1月1日~1999年12月31日)968例,ワルファリン確立期(2000年1月1日~2011年3月24日)566例と直接阻害型経口抗凝固薬導入期(2011年3月25日~2022年12月31日)479例に分け,観察期間別全死亡率と死因別死亡率を比較した.【結果】Fine and Grayの比例ハザードモデルを用いた検定にて,経時的な全死亡率の増加と脳梗塞死亡率の減少を認めた.脳梗塞死に影響を及ぼす因子の多変量解析にて,年齢,女性,持続性/永続性AF, 脳梗塞/一過性脳虚血発作/全身性塞栓症既往が正の相関性を,抗凝固療法が負の相関性を示した.【結論】AF患者の脳梗塞死は経時的に減少し,抗凝固療法がその一因と考えられた.

  • 山村 泰弘, 水野 颯, 松井 秀介
    論文ID: 11208
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/26
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    Twisted carotid bifurcation(TCB)とは,頸部において内頸動脈が外頸動脈の内側を走行している状態である.成因として先天性素因や,動脈硬化などによる後天性素因が考察されているが,いまだ明らかにはなっていない.今回舌骨の可動性により,繰り返しTCBが形成された症例を経験したので報告する.69歳女性,中等度の左内頸動脈狭窄に対して経過観察をしている.右総頸動脈分岐部の角度が初診時には正常走行を示し,1年後には約90度捻転してTCBを形成していた.翌年の所見では正常に戻り,また1年後には再度TCBを形成していた.画像を見直し,正常時には頸動脈は舌骨の外側を走行し,TCBの状態では舌骨の内側にあることが確認された.舌骨の可動性を考えると,本症例ではそれがTCBの成因となっているものと考えられた.

  • 稲桝 丈司, 冨保 和宏, 市川 誉基, 吉井 雅美, 大島 壮生, 宮田 貴広, 真柳 圭太
    論文ID: 11167
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/19
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    【背景および目的】高齢化により独居高齢者数も急速に増加,独居脳梗塞患者の増加も予想される.2011年1月~2012年12月を前期,2021年1月~2022年12月を後期とし,10年間隔で独居者が急性期脳梗塞患者全体に占める比率,救助要請形式がいかに変化したかを当院データで比較.また,後期では大血管閉塞に対する機械的血栓回収療法が,独居者でどの程度施行されていたか調べた.【結果】前期では独居者比率は6.7%,後期では11.5%で相対比1.72と有意に増加( p=0.01).自力救助要請率は低下,後期で自力救助要請できたのは1/3程度であった.第三者救助要請率は上昇していた.後期では,大血管閉塞症例中33%で機械的血栓回収療法が施行されていた.【結論】今回示された独居脳梗塞患者数の増加は,今後も続くことが予想されるが,それにいかに対応すべきかは社会全体で共有すべき課題である.

  • 岩本 宗矩, 大塚 喜久, 加藤 歩, 矢幡 悟大, 井村 隼, 岡村 有祐, 松本 賢亮
    論文ID: 11181
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/18
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    88歳女性.心不全・尿路感染症で入院し,末梢静脈カテーテルから抗菌薬を投与されていた.入院12日目に突然の意識障害・右片麻痺を呈した.頭部MRIで左前大脳動脈(ACA)・中大脳動脈(MCA)の境界域に拡散制限域があり,T2*強調画像(T2*WI)で同領域の皮質,脳溝に多発低信号を認めた.T2*WIの低信号にほぼ一致してCTで空気像があり,脳空気塞栓症と診断した.翌日,意識障害・片麻痺は改善し,CTの空気像とT2*WIの低信号も消失した.脳空気塞栓症は末梢静脈カテーテルのみ留置下の報告もあり,ACA・MCAの境界域に好発する.空気はT2*WIで信号消失し,少数ながら,本例と同様にT2*WIで多発低信号を認めた脳空気塞栓症の報告もある.末梢静脈カテーテル留置のみで,高侵襲な処置を行っていなくても,T2*WIで大脳皮質や脳溝に沿う多発低信号を認めた場合は,脳空気塞栓症を考慮すべきである.

  • 金森 翔太, 小島 隆生, 伊藤 裕平, 前田 卓哉, 喜古 雄一郎, 山田 慎哉, 金城 貴士, 竹石 恭知, 藤井 正純
    論文ID: 11201
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/15
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    症例は74歳男性.血圧低下を伴う心室頻拍発作のため前医に搬送され,アブレーション目的に当院循環器内科へ紹介された.アブレーションは局所麻酔下に実施され,カテーテルを経動脈的に左室内に挿入した直後に失語が出現し,当科紹介となった.脳血管撮影を実施したところ,左中大脳動脈M1 distalの閉塞を認めた.Combined techniqueによる血栓回収術を実施し,1 passでthrombolysis in cerebral infarction (TICI) Grade 3の再開通を得た.術直後より症状は改善した.塞栓子の病理所見はフィブリン血栓で,その後実施した経食道心エコーおいて,大動脈弓部に可動性のあるプラークを認めた.左室内膜アブレーションに際しては,アクセスルートの評価を含めた脳卒中リスクについて,循環器内科との共有と連携が重要であると考える.

  • 馬場 大地, 藤村 陽都, 福山 幸三, 清澤 龍一郎, 荒川 渓, 三本木 千尋, 梶原 真仁, 原田 啓, 高木 勝至
    論文ID: 11210
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/15
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    症例は,右三叉神経痛に対し2度のガンマナイフ治療(gamma knife radiosurgery: GKS)を施行された既往がある,くも膜下出血の78歳女性.搬送時のCT angiographyで,右前下小脳動脈–後下小脳動脈共通幹の分岐部に3 mm大の動脈瘤を認めた.開頭手術によるtrappingを行い,mRS 1で自宅退院となった.GKSの照射野周囲の高線量領域に含まれる仮性動脈瘤であり,放射線関連動脈瘤と判断した.GKS関連動脈瘤は仮性動脈瘤であることが多く,小型でも破裂を起こす危険性が高い.ガンマナイフ照射野に圧迫血管が含まれないように工夫が必要である.GKS関連動脈瘤の治療はtrappingが必要なことが多く,脳梗塞を合併することがあるので注意が必要である.個々の症例に応じて,血管内治療と直達手術のどちらが安全で確実であるか,検討が重要である.

  • 山髙 元暉, 牧野 健作, 西岡 和輝, 眞上 俊亮, 中尾 保秋, 山本 拓史
    論文ID: 11188
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/07
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    下垂手は,末梢神経障害の典型的な臨床症状とされているが,今回我々は,下垂手を主訴として来院した急性期脳梗塞に対して,血栓溶解療法を用いて良好な転帰をたどった症例を経験したので報告する.症例は75歳男性,突然の手関節より末梢の筋力低下を主訴に来院した.頭部MRIにて左運動野に限局する急性期脳梗塞を認め,rt-PAによる静注血栓溶解療法を行った.神経症状は急速に改善し.神経脱落所見なくmRS 0で自宅退院した.手指に限局する筋力低下を主訴とする脳梗塞は稀で,末梢性神経障害との鑑別が問題となる.手指機能は日常生活に大きく影響するため,脳虚血を原因とする場合には,適切な治療の早期介入が必須である.本症例は,早期の診断と治療介入により良好な転帰を得られた.

  • 松崎 丞, 山本 直樹, 岩田 亮一, 石本 幸太郎, 川村 晨, 樫村 洋次郎, 山縣 徹, 生野 弘道, 西川 節
    論文ID: 11196
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/12/07
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    破裂脳動脈瘤によるSAHにおいて,コイル塞栓術後に脳動脈瘤とは離れた部位の血腫が増大した症例に関して報告する.症例1:47歳女性,左内頚動脈–後交通動脈瘤破裂のため,コイル塞栓術を行った.術後,左insular cistern内の血腫が増大したため,第3病日に開頭減圧術を行った.症例2:80歳女性,右内頚動脈–後交通動脈瘤破裂のため,コイル塞栓術を行った.術後,右insular cistern内の血腫が増大し,第4病日に死亡した.いずれの症例もsubpial hematomaの増大であったと考えられた.2症例とも術中活性化凝固時間の過延長はみられず,手術終了時にプロタミンを静注してヘパリン中和を行っていた.また,周術期に抗血小板剤は使用しなかった.術前評価でsubpial hematomaの可能性があれば,急性期に血腫増大リスクがあるため,治療戦略を十分に検討する必要があると考えられた.

  • 市川 大, 柳澤 俊晴, 大森 泰文, 鎌田 幸子
    論文ID: 11172
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/30
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    症例は70歳女性.頭痛を主訴に当院を受診し,MRI T2, FLAIRで右側頭葉の髄軟膜病変と半卵円中心に多数の血管周囲腔拡大を認めた.半年後の経過観察MRIで皮質微小出血,皮質脳表ヘモジデリン沈着を認め,3年後には右下1/4同名半盲と意識障害を呈し,MRIで髄軟膜病変の拡大と出血性病変の増大を認めた.脳生検の結果,アミロイドβ関連血管炎と診断し,ステロイド治療を行うも,意識障害が残存した.本例では,血管炎による炎症が先行し,その後血管脆弱性から出血を来したことが推定された.発症初期に出血性病変を呈さず,髄軟膜病変と血管周囲腔拡大を認める症例では,炎症性脳アミロイド血管症を鑑別診断に挙げる必要がある.

  • 宮里 紗季, 植村 順一, 山下 眞史, 八木田 佳樹, 井上 剛
    論文ID: 11186
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/30
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開
    電子付録

    82歳,男性.家族歴はなく,脊柱管狭窄症の既往歴があった.自宅で倒れているのを発見され,救急搬送された.来院時の神経所見は意識JCS-II-30, 左側空間無視,右共同偏視,構音障害,左顔面を含めた左片麻痺あり,頭部MRIで右中大脳動脈後方枝領域に急性期脳梗塞,MRAで右中大脳動脈M2(後方枝)閉塞を認めた.入院翌日に心電図で心房細動あり,経胸壁心エコーで重度拡張能障害とapical sparingがあった.99mTcピロリン酸心筋シンチグラフィで心臓に核種の異常集積を認めたことから,amyloid transthyretin(ATTR)心アミロイドーシスに合併した心原性脳塞栓症と早期に診断した.これまで心原性脳塞栓症と診断されていた脳梗塞患者の中に,ATTR心アミロイドーシスが潜在する可能性があり,その存在を念頭に置いて精査することが重要である.

  • 吉岡 大和, 奥村 栄太郎, 小野寺 翔, 神保 洋之
    論文ID: 11189
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/24
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    Angio-Seal(テルモ,東京)は,すでに多くの施設で使用されている止血デバイスであるが,使用による出血性および閉塞性合併症も散見される.今回我々は,Angio-Sealを使用した大腿動脈穿刺部の止血から1週間後の遅発性大腿動脈閉塞を経験したため,報告する.症例は,80歳男性.心房細動,脳梗塞,高血圧の既往あり.突然の意識障害,左片麻痺を認め,造影CT検査で右内頚動脈急性閉塞症の診断に至った.機械的血栓回収療法を施行し,完全再開通が得られた.右大腿動脈穿刺部の止血に8 Fr Angio-Sealを使用し,止血が得られた.穿刺部の止血から1週間後に,右下肢の疼痛,蒼白,足背動脈の拍動が触知不良となり,下肢造影CT検査を施行したところ,右大腿動脈閉塞症と診断した.同日,心臓血管外科により緊急血栓除去術が施行され,再開通が得られた.

  • 荒井 雪花, 稲次 基希, 清水 一秀, 近藤 静琴, 清川 樹里, 酒井 亮輔, 藤野 明日香, 金 瑛仙, 林 俊彦, 若林 光, 金岡 ...
    論文ID: 11180
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    【背景】脳卒中後てんかんには,治療薬選択基準がない.新規抗てんかん発作薬ペランパネルの長期治療効果を検討した.【対象・方法】2016年6月~2022年4月にペランパネル投与を開始した,脳卒中後てんかん28例の患者背景や投与量,併用薬剤,副作用,最長24カ月の発作消失率・忍容率を調査した.【結果】平均55.8歳(17~97歳),脳卒中病型は,出血性20人(71.4%),虚血性8人(28.6%).投与開始時の平均併用薬剤数は1.1剤,平均維持投与量は3.6 mgで3, 6, 12, 24カ月での発作消失は77%, 80%, 83%, 80%であった.忍容率は80%以上で,発作型別ではfocal to bilateral tonic-clonic seizuresの成績が良好であった.病因別や先行薬剤数で治療成績に差は認めない.【結語】ペランパネルは,脳卒中後てんかんに対し,長期的な治療効果と忍容性を示した.

  • 泉原 康平, 神浦 真光, 守本 純, 小川 智之, 藤田 浩二, 小林 和樹
    論文ID: 11184
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/14
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    症例は86歳男性.1週間前から持続する視野障害と頭痛を主訴に受診した.頭部CTで右後頭葉皮質下出血を認め,保存的加療目的に入院した.入院時より誤嚥性肺炎による発熱を繰り返し,そのたびに抗菌薬治療で軽快していた.Day35に失行が出現し,Day41に施行した頭部MRIで脳出血部に脳膿瘍を疑う病変を認め,硬膜下や右側脳室内にも同様の病変を認めた.穿頭によるドレナージ術を行い,術中所見から脳膿瘍と診断した.術中検体と同日採取した血液培養から Bacteroides fragilisが検出された.抗菌薬治療を約6週間行い,療養型病院に転院した.脳出血後の脳膿瘍は報告が少なく,稀な合併症である.本症例は脳膿瘍と血液から同一の菌種が同定された初めての症例である.さらに, Bacteroides fragilisが脳出血に続発した脳膿瘍の起因菌として報告された症例は,渉猟し得た限り見当たらなかった.そこで我々は,この稀な症例を文献的考察を加えて報告する.

  • 稲桝 丈司, 秋山 武紀, 赤路 和則, 稲葉 真, 柴尾 俊輔, 小嶋 篤浩, 寺尾 聰, 林 拓郎, 釜本 大, 倉前 卓実, 福永 篤 ...
    論文ID: 11190
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/13
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    【背景および目的】近年,高齢化に伴う高齢者ドライバーの増加,および高齢者ドライバーが運転中に脳卒中に罹患することによる自動車事故の増加が社会的に懸念されている.今回,「慶應義塾大学脳動脈瘤共同研究」データベース解析により,運転中発症くも膜下出血(aneurysmal SAH: aSAH)の全体に占める比率および特徴を解析した.【結果】発症時行動様式が記録されていた623名中,発症時運転中だったのは10名(1.6%).623名を発症時運転群(n=10)と非運転群(n=613)とに分け,臨床因子を比較した.運転時発症群は有意に男性比率が高かったが,それ以外の臨床因子(来院時aSAH重症度,退院時予後等)では有意差を認めなかった.【結論】自動車運転とaSAH発症との因果関係については否定できず,また,運転時に発症した場合事故につながる確率は低くないため,研究継続されるべき課題である.

  • 西田 恭優, 今井 資, 雄山 隆弘, 川端 哲平, 野田 智之, 槇 英樹
    論文ID: 11174
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/08
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    COVID-19に合併した内頚動脈解離によるくも膜下出血の報告は,稀である.今回,COVID-19に合併した破裂性内頚動脈解離に対してclipping on wrappingを行い,良好な経過を得た症例を経験した.症例は52歳男性.COVID-19罹患後5日目に意識障害で当院搬送され,頭部CTで水頭症を伴うくも膜下出血を認めたが,明らかな動脈瘤を指摘できず,脳室ドレーンによる頭蓋内圧管理とCOVID-19に対する内科管理を行った.経時的な画像検査で,左内頚動脈C1部に血管拡張と極小型脳動脈瘤を認め,解離性内頚動脈瘤と診断し,第16病日に開頭手術を行い,第77病日にmRS4でリハビリ転院した.COVID-19に合併したくも膜下出血は,解離発症の報告が多いものの内頚動脈解離の報告例は少なく,外科的治療戦略は一定の見解がないが,感染の活動性,動脈瘤の病態など,症例ごとに判断する必要がある.

  • 倉内 麗徳, 恩田 敏之, 高橋 賢, 稲村 茂, 野中 雅, 大坊 雅彦
    論文ID: 11182
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/02
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    症例は70歳男性.意識障害を主訴に当科に救急搬送された.MRIでは左前大脳動脈水平部(A1部)から両側前大脳動脈垂直部(A2部)の閉塞と,両側前大脳動脈領域の急性期脳梗塞を認めた.直ちに血栓回収療法を行い,右A2部は再開通したが,左A2部を再開通させることはできなかった.術中や術直後には頭蓋内出血はみられなかったが,治療2日後に前交通動脈に仮性動脈瘤が出現し,くも膜下出血と水頭症を認めた.脳室ドレナージと左A1部の母血管閉塞を行った.心エコーで大動脈弁に疣腫の付着と血液培養で Enterococcus faecalisが検出され,感染性心内膜炎と診断した.セフトリアキソンやバンコマイシン,ピペラシンによる抗菌薬加療を行い,感染徴候は軽快したが,突然心停止し死亡した.感染性心内膜炎などの感染を背景にした塞栓症では,血栓回収が難しいことや,遅発性に動脈が破裂することがあり,注意が必要である.

  • 中野 孝宏, 安部 裕子, 濱本 暁子, 米田 明日香, 田中 愛実, 上田 直子, 池田 充, 原 斉
    論文ID: 11177
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/01
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    症例は,68歳男性.転移性肺癌に対する胸腔鏡下左肺下葉切除術の翌日,意識障害・左片麻痺の状態で倒れているところを発見された.NIHSSは25点であり,頭部MRI検査のDWIでは,右基底核から放線冠に淡い高信号病変を,MRAでは右内頚動脈の閉塞を認め,超急性期脳梗塞と診断した.経皮的脳血栓回収術を施行し,完全再開通を得た.胸部造影CT検査で左下肺静脈の断端部に血栓を認め,塞栓源と考えた.肺静脈断端部の残存血栓については,抗凝固療法を継続しつつ慎重に経過観察を行った.頻回の造影CT検査を避けるため,心臓MRI検査で血栓の経過観察を行い,血栓の消失を確認した.心臓MRI検査は肺静脈断端部血栓の評価および経過観察においても非侵襲的かつ有用な検査方法である.

  • 金丸 拓也, 木戸 俊輔, 阿部 新, 大久保 誠二, 木村 和美
    論文ID: 11179
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/11/01
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    症例は73歳男性.ふらつきを主訴に救急搬送された.頭部MRIで大脳半球や小脳半球に散在性梗塞を認めた.各種塞栓源検索では明らかな原因は指摘できなかったが,既往に右上腕骨未分化多形肉腫があり,入院中の体幹部CTにて多発遠隔転移が疑われ,本例は癌関連血栓症(CAT)による脳梗塞と考えられた.ヘパリンカルシウム皮下注射を開始し,再発なく経過していたが,直接作用型経口抗凝固薬に切り替えてから2週間後に塞栓性脳梗塞を再発した.CATは,腺癌に多いとされ,腺癌細胞が分泌するムチンにより形成される微小血小板血栓が関与しているといわれている.しかし,腺癌以外の悪性腫瘍によるCATの報告も散見され,特に,遠隔転移を有する症例において血栓症のリスクが増大することが知られている.遠隔転移を伴う悪性腫瘍患者が塞栓性脳梗塞を起こした際は,腺癌でなくても本症例のように癌関連血栓症の可能性を念頭に検索する必要がある.

  • 伊藤 陽平, 加藤 貴之, 西脇 崇裕貴, 今井 直哉, 秋 達樹, 白紙 伸一
    論文ID: 11166
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/10/24
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    髄膜血管型神経梅毒が疑われた脳卒中の症例報告を行う.症例は56歳男性で,性風俗店利用中に突然の右上肢脱力と頭痛を来し,救急搬送された.CT, MRIにて少量の円蓋部くも膜下出血および左大脳穿通枝領域の脳梗塞を認め,各種画像検査では両側脳主幹動脈の複数領域にわたる狭窄性変化がみられた.入院時の採血で梅毒反応陽性であり,髄液検査を追加したところ,細胞数112/µl,蛋白95.0 mg/dl,TP抗体定量149.6 COI,RPR定量10.6 R.U.と上昇しており,髄膜血管型神経梅毒と診断した.ペニシリン点滴静注とステロイドパルス療法を行い,髄液RPR定量は0.1 COIに陰性化するとともに脳主幹動脈の狭窄性病変は改善し,自宅退院となった.頭蓋内出血を伴う髄膜血管型神経梅毒は稀な病態であるが,梅毒患者増加に伴い同様の症例が増える可能性がある.他疾患との鑑別を慎重に行い,迅速にペニシリン投与を行うことが重要である.

  • 矢野 鉄人, 秋山 茂雄, 前田 有貴子, 福嶋 直弥, 日野 修嗣
    論文ID: 11158
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/10/17
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    症例は54歳男性.脳梗塞発症翌日に失語が出現した.失語は急速に改善し,一過性脳虚血発作と考えた.第5病日に再度失語が出現し,その後すぐに右半身に,けいれん発作がみられた.発作中に施行した脳波検査で,左前頭葉から頭頂葉を中心とした左大脳半球に持続する律動性デルタ波がみられた.症状および脳波異常は,ジアゼパム投与にて改善したことから,脳梗塞後early seizureと診断した.脳卒中後けいれんは,脳梗塞の約10%で生じるとされている.本症例では,失語が繰り返し出現していたことから,抗てんかん薬ラコサミドを導入した.抗てんかん薬導入後は,神経症状の再燃なく経過した.非けいれん症状で発症する脳梗塞後early seizureは,脳虚血発作との鑑別が難しく,脳虚血発作との鑑別を行うためにearly seizureの可能性を考慮し,診療にあたることが大切であると考えられた.

  • 成清 道久, 壷井 祥史, 広川 裕介, 大橋 聡, 松岡 秀典, 長崎 弘和
    論文ID: 11161
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/10/12
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    急性期主幹動脈閉塞に対して,Willis動脈輪を経由した血栓回収療法の症例報告が散見される.今回,慢性左頸部内頸動脈閉塞を罹患した急性期両側中大脳動脈閉塞に対して,右内頸動脈より前交通動脈経由で血栓回収療法を行い,有効な再開通を得た症例を経験したため,論文的考察を加え報告する.症例は83歳女性.慢性左頸部内頸動脈閉塞に以前より罹患しており,突然の意識障害・失語・四肢不全麻痺で当院へ搬送された.神経放射線画像診断で,両側中大脳動脈閉塞による急性期脳梗塞の診断に至り,発症より約5時間で血栓回収療法を行った.右頸部内頸動脈にガイディングカテーテルを留置し,前交通動脈を経由してステントリトリーバーを用いて血栓回収を行い,左中大脳動脈閉塞の有効な再開通を得た.引き続き,右中大脳動脈閉塞も血栓回収を行い,有効な再開通を得た(発症より6時間37分).術後は両側性に散在する梗塞巣を認めたため,転帰は不良であった.

  • 浜田 恭輔, 町田 明理, 牧野 隆太郎, 森 拓馬, 山下 ひとみ, 有水 琢朗, 谷口 歩, 濱田 陸三, 神田 直昭
    論文ID: 11164
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/10/04
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    症例は73歳男性.起床時に左共同偏視,右片麻痺および全失語に気付かれ,救急搬送された.超急性期脳梗塞の診断で,機械的血栓回収療法を施行する際に左ICA無形成が判明した.左後交通動脈(posterior communicating artery: PcomA)の閉塞を認め,同血管を主要な側副血行路として,左大脳半球領域は灌流されていると判断した.左VAを経由して,閉塞していた左PcomAへアプローチし,同血管の再開通を得て,症状の改善が得られた.ICA無形成は稀な破格で0.01%未満の発症頻度とされる.通常は無症候性だが,主要な側副血行路の閉塞により症状が顕在化する.頭部CTによる頚動脈管の有無の確認や,側副血行路の把握が重要である.通常とは異なる経路でのデバイス誘導が必要な場合があり,デバイス選択の配慮,また潜在的な動脈瘤や動脈硬化性病変の存在に注意した慎重な操作が求められる.

  • 安部 大介, 桑城 貴弘, 林田 寛之, 有水 遥子, 水戸 大樹, 今村 裕佑, 村谷 陽平, 溝口 忠孝, 田川 直樹, 森 興太, 杉 ...
    論文ID: 11160
    発行日: 2023年
    [早期公開] 公開日: 2023/09/27
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    症例は86歳の女性.発熱および意識障害を呈した肺炎球菌性髄膜炎に対して,抗菌薬とデキサメタゾンによる治療を開始した.髄膜炎症状は改善したが,四肢の麻痺が出現し,発症7日目の頭部MRIで多発する脳梗塞病変を認めた.D-dimer 49.8 µg/mlと著増していたが,心原性脳塞栓症を疑わせる所見はなく,髄膜炎に伴う頭蓋内限局性のびまん性脳血管内凝固(diffuse cerebral intravascular coagulation)が原因と考えられた.抗凝固療法を開始後は脳梗塞の再発はなく,脳主幹動脈の狭窄や血管壁の増強効果も認めず,血管攣縮や血管炎は否定的であった.細菌性髄膜炎に伴う脳梗塞の治療法は確立されていないが,diffuse cerebral intravascular coagulationの病態に対しては抗凝固療法が有効である可能性が示唆された.

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