ウイルス
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特集2 [第51回ウイルス学会学術集会シンポジウム
「ウイルス学から臨床医学へ」]
1. 遺伝子治療テクノロジーの開発とその応用
小澤 敬也
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2004 年 54 巻 1 号 p. 49-57

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抄録

遺伝子治療臨床研究の停滞を打ち破ったのがX連鎖重症複合免疫不全症 (X-SCID) に対する造血幹細胞遺伝子治療で, 明瞭な治療効果が得られたことから大きな脚光を浴びた. しかしその後, この遺伝子治療を受けた患者2名が白血病を発症し, レトロウイルスベクターによる遺伝子導入が引き金となったことから深刻な問題となった. すなわち, 挿入変異によるLMO2遺伝子の活性化が白血病発症の一因となったことが明らかにされた. 今後の対策としては, レトロウイルスベクターの安全性を高めること, 部位特異的遺伝子組込み法の開発などの基盤研究が重要となる. また, より多くの疾患で造血幹細胞遺伝子治療の効果を上げるには, 選択的増幅遺伝子 (SAG) などの細胞制御技術の開発も必要である. その他, 安全性の観点からは非病原性ウイルスに由来するAAVベクターの臨床応用が期待される. このベクターは神経細胞・筋細胞・肝細胞などへの遺伝子導入に適しており, 例えば, パーキンソン病の遺伝子治療などへの応用が検討されている. 遺伝子操作技術は再生医療の領域でも必須であり, さらなる開発研究の推進が望まれる.

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© 2004 日本ウイルス学会
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