ウイルス
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特集1 ウイルスとインターフェロン
4. インフルエンザウイルス感染細胞における宿主遺伝子の発現
清水 一史黒田 和道
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2004 年 54 巻 2 号 p. 189-196

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抄録

インフルエンザウイルス感染細胞ではIFN (interferon) -α/β, MxA, OAS (2',5'-oligoadenylate synthetase), Fasなど感染防御に働く宿主遺伝子の発現が誘導される. 一方, ウイルスタンパク質合成の立ち上がりに伴って, 宿主タンパク質合成の著しい抑制, すなわち, 宿主遺伝子発現のshut-offが起こる. 最近, 我々はインフルエンザウイルスNS1タンパク質が宿主mRNA前駆体ポリA部位切断反応の阻害活性を持つことを明らかにした. そして, Krug等のグループによりNS1と結合する宿主因子が同定され, 宿主遺伝子の発現をmRNAの転写後修飾の段階で抑制する新しい機構が明らかになった. また, NS1がdsRNAに結合して細胞内シグナル伝達レベルでIFN誘導性遺伝子の発現を抑制することが明らかになってきた. 感染細胞は遺伝子の発現をめぐるウイルスと宿主の戦場といえる. 我々は攻防の全体像を知るためインフルエンザウイルス抵抗性細胞と感受性細胞における遺伝子発現の網羅的解析を行っている. ウイルス感染誘導性遺伝子は大半がIFN誘導性遺伝子と重なり, 抵抗性細胞では抗ウイルス活性が知られている遺伝子の高発現誘導がみられた.

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© 2004 日本ウイルス学会
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