ウイルス
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特集1:自然免疫とウイルス感染
自然免疫系におけるDNAセンサー
高岡 晃教篠原 茂樹
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2008 年 58 巻 1 号 p. 37-46

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抄録

 自然免疫系におけるパターン認識受容体(pattern recognition receptors;PRRs)は感染をいち早く前線において感知し,その後,細胞内にシグナルを伝え,I型インターフェロン(interferons; IFNs)や炎症性サイトカイン・ケモカインの発現誘導といった自然免疫応答の活性化のswitchをONにする役割がある.さらに適応免疫系の活性化へとつなぎ,特異的な免疫応答発動を導く.このようなPRRsによる自然免疫系と適応免疫系の連携は効率のよい病原体の排除に重要である.RNAセンサーに関する研究はかなり進んでいる一方で,DNAセンサーとしてはTLR9(Toll-like receptor 9)のみしか知られていなかった.しかしながらTLR9非依存性経路に関する報告が数多くなされており,TLR9以外のDNAセンサーの存在が強く示唆された.この流れの中で,最初の細胞質DNAセンサーとしてDAI(DNA-dependent activator of IRFs; 別名DLM-1/ZBP1)という分子が同定された.この分子を介してIFN調節因子(IFN-regulatory factors;IRFs)やNF-κBの活性化が誘導されることが示された.また最近の報告では,DAI(DLM-1/ZBP1)以外のDNAセンサーの存在を示唆する結果も示されている.さらにNLR(Nod-like receptor)ファミリーメンバーやASC(apoptosis-associated speck-like protein containing a CARD),caspase-1の複合体からなるインフラマソーム(inflammasome)が微生物および宿主由来のDNAの細胞質内での認識機構に関与しており,TLR9やDAI(DLM-1/ZBP1)とは無関係に,炎症性サイトカインの誘導を引き起こすことも報告されている.一方で,DAI(DLM-1/ZBP1)にみられるZ-DNA結合領域(ZαやZβ)と相同のモチーフをもつ宿主あるいはウイルス由来のタンパク質が細胞質DNAによって活性化される免疫応答に対し,負に制御することが示された.このように自然免疫系活性化を誘導するDNA認識機構は複雑なメカニズムによって制御を受けており,その機能障害は免疫異常の病態を引き起こす可能性が考えられる.

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© 2008 日本ウイルス学会
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