日本東洋医学雑誌
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原著
酒製大黄の薬効及び使用に関する史的考察(2)
—酒洗大黄と酒浸大黄の主成分含量の比較—
堂井 美里垣内 信子江原 利彰御影 雅幸
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2010 年 61 巻 2 号 p. 133-137

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抄録

中国医学では古来,生薬を特定の目的で修治してきた。漢方生薬「大黄」には黄酒を用いて酒洗及び酒浸の修治が施されてきた。しかし,これら酒製の意義の科学的解明は不十分である。そこで,本研究ではエタノール溶液を用いて修治大黄を調製し,主成分含量(sennoside A, sennoside B, aloe-emodin, rhein, emodin, chrysophanol, physcion, lindleyin, isolindleyin, tannin類)の変化を調査した。16%エタノール溶液に30秒間浸した酒洗大黄では,sennoside含量は生大黄とほぼ同様であった。すなわち,瀉下作用は保持されていると考えられる。一方,エタノール溶液に12~24時間浸した酒浸大黄では,生大黄に比してsennoside及びtannin類が減少し,anthraquinone類が増加した。すなわち,酒浸大黄はanthraquinone類の抗菌・抗炎症作用を増加し,これは駆瘀血作用に繋がると考えられる。これらの結果は前報の金元代以降の本草書及び医方書の記載内容と一致した。

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© 2010 一般社団法人 日本東洋医学会
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