感染症学雑誌
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成人麻疹入院患者の臨床的検討
小児麻疹入院患者と比較して
高山 直秀菅沼 明彦
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2003 年 77 巻 10 号 p. 815-821

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抄録

2000年1月から2002年12月までの間に当院に入院した113名の成人麻疹入院患者について年齢, 麻疹ワクチン接種歴, 感染経路, 最高体温, 有熱期間, コプリック斑や発疹の有無などの臨床症状を調査し, 同時期に入院していた1~5歳の小児麻疹患者と比較した. 患者の年齢分布では20代前半の若年成人患者が最も多く, 大多数の患者は麻疹ワクチン未接種, 麻疹未罹患であり, 感染経路は不明者が最も多かった. 臨床症状では咽頭痛を除いてコプリック斑, 咳嗽, 発疹などの出現率において小児麻疹患者と差がみられず, 入院期間はやや長い傾向がみられたものの有意差はなく, 有熱期間や最高体温にも有意差がなかった. 合併症は113例中17例にみられた. 成人患者では脳炎3例, 急性散在性脳脊髄炎1例と中枢神経系合併症が相対的に多く, 肺炎は4例と比較的少なかったが, 小児患者では中枢神経系合併症例はなく, 気管支炎・肺炎が45例中16例に, 仮性クループが1例に, 中耳炎が6例にみられた. 後遺症を残した小児例はなかったが, 軽度の後遺症を残した成人麻疹例が3例あった. 以上より, 成人麻疹入院患者の症状は小児期麻疹入院患者と同等ないしやや重症といえる.

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