2010 年 51 巻 5 号 p. 236-242
症例は25歳女性.両下腿浮腫および肝機能異常を主訴に当科外来を受診した.腹部超音波検査にて肝左葉に約9 cmの腫瘤を認め精査加療を目的に入院となった.腫瘤によって下大静脈は狭窄,肝内に側副血行路を形成し,Budd-Chiari症候群様の血流異常を認めた.腫瘤は各種画像診断より限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia:FNH)と診断,肝左葉および尾状葉切除術を施行した.切除標本の病理診断はFNHであり,術後,下大静脈の血流は改善し肝機能も正常化した.FNHによる下大静脈狭窄によりBudd-Chiari症候群様の血流異常を呈することは稀であり報告した.