肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
症例報告
HBs抗原陰性化後に肝細胞癌を発症したHBVキャリア症例
大穂 有恒梶原 英二山下 尚毅牧野 一郎東 秀史鎌田 宏二下釜 達朗金城 満佐渡島 省三
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 52 巻 3 号 p. 176-183

詳細
抄録

HBs抗原陰性化後に肝細胞癌を発症したHBVキャリア3症例を経験した.1例目は73歳男性.濃厚な肝細胞癌の家族歴を有する.15年前HBs抗原陽性を指摘され,4年3カ月前HBs抗原低力価陽性.CT&肝動脈造影による肝細胞癌診断時にHBs抗原陰性.肝表面は平滑で非腫瘍部の組織はA1F0.2例目は61歳男性.32歳より39歳までB型肝炎の増悪を繰り返し数年後HBe抗原セロコンバージョンし,ALTは正常を持続.1年1カ月前HBs抗原陰性,CTで肝内占拠性病変なし.右季肋部痛で発症し,CTと肝動脈造影にて肝細胞癌破裂と診断.3例目は69歳男性.8年前にHBV関連肝硬変と診断.1年2カ月前の採血でHBs抗原陰性.MRIにて径1.5 cmの肝細胞癌をみとめた.3例とも肝細胞癌診断時の血液検査はHBV既往感染の所見で,2例は慢性肝炎と肝硬変の基礎疾患を有するも,他1例はほぼ正常肝の無症候性キャリアからの発癌例であった.正常肝の無症候性キャリアも含め,HBs抗原陰性化後も肝細胞癌の出現例があることを念頭に置く必要がある.

著者関連情報
© 2011 一般社団法人 日本肝臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top