2015 年 23 巻 2 号 p. 109-122
目的:栄養表示利用行動と健康・栄養状態の関連を特定することを目的とした.
方法:国内外の論文の系統的レビューを行った.海外文献はPubMed,国内文献は医中誌とCiNiiを用いてデータベース検索を行うとともにハンドサーチを行った.表題及び抄録の精査による1次スクリーニング,本文の精読による2次スクリーニングの結果,海外文献9件,国内文献9件を採用した.
結果:国外では成人,国内では大学生を対象とした研究が多かった.栄養表示利用行動と健康・栄養状態との関連をみていた論文のうち,交絡因子を検討していたものは国外6件,国内2件であった.交絡因子を検討した研究においては,利用行動の把握方法が主観的(自己申告)である等の限界はあるが,国外においては,過体重者が標準体重者に比べ,表示をよく利用していた,心疾患と診断されたことがある者の方がコレステロールに関する表示を利用していた等,健康・栄養状態に問題のある者の方が栄養表示をよく利用していた研究がみられた.一方,国内においては,有意な関連がみられた研究はなかった.
結論:国外の研究では,健康・栄養状態に問題がある者の方が栄養表示をよく利用することがあると示されていた.国内の研究は対象者が限定されており,健康・栄養状態と栄養表示の利用との有意な関連は認められなかったということを確認した.