こころの健康
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看護婦が受けたセクシャル・ハラスメント
質問紙調査による実態の把握
阿部 利香松岡 恵子栗田 廣
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1998 年 13 巻 2 号 p. 81-88

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抄録

看護婦におけるセクシャル・ハラスメントの実態を把握するため, 看護系4学校の昭和56年度~平成6年度卒業生800名に対し, セクシャル・ハラスメントの経験に関する質問紙を郵送により送付し, 回収した。有効回答数は243名 (有効回収率は36.8%), 回答者はすべて女性であり, 平均年齢は29.1歳 (SD=3.7, 範囲21-37) であった。セクシャル・ハラスメントの経験が「ある」と答えたのは120名 (49.4%) であり, 最初にセクシャル・ハラスメントを体験した年齢は平均22.8歳 (SD=2.3, 範囲18-32), 最もひどいセクシャル・ハラスメントを経験した年齢は平均24.0歳 (SD=3.0, 範囲18-34) であった。最もひどいセクシャル・ハラスメントの加害者に関して, 性別は男性 (112名: 94.9%) が, 年齢は40代 (39名: 32.5%) が, 婚姻状態は既婚者 (77名: 64.2%) がそれぞれ最も多かった。また加害者を職種別 (複数回答) にみると, 医師が83名 (69.2%), 患者が39名 (32.5%) であった。最もひどいセクシャル・ハラスメントを受けたときの変化としては, 「解雇された」「望まない配置転換をされた」ものはいなかったが, 「精神的に負担になった」ものが40名 (33.3%) いた。これらの結果をまとめると, 本研究の対象となった看護婦におけるセクシャル・ハラスメントは, (1) 49.4%という高頻度で経験されており, (2) 加害者は医師が多く, (3) セクシャル・ハラスメントの種類としては職場環境型セクシャル・ハラスメントが多いことが明らかになった。

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© 日本精神衛生学会
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