高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
総合論文
後周期遷移金属触媒による置換アセチレンの精密重合
塩月 雅士尾西 尚弥Jesus RODRIGUEZ CASTAÑON増田 俊夫三田 文雄
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 68 巻 5 号 p. 210-222

詳細
抄録

置換アセチレン化合物の精密重合を達成する新規後周期遷移金属触媒についてまとめた.筆者らは,これまで置換アセチレン重合に用いられるロジウム触媒について,電子求引性ジエン配位子である tfb(テトラフルオロベンゾバレレン)を配位子として錯体に導入することでその触媒活性が著しく向上することを報告している.今回,新たにこの tfb 配位子を双性イオン型およびカチオン性ロジウム錯体に導入することでそれぞれの触媒の高活性化を達成した.とくに,後者のカチオン性ロジウム錯体を触媒に用いる系では,共触媒としてアミンを添加することによりフェニルアセチレン類がリビング的に重合することを明らかにした.具体的には,カチオン錯体[(tfb)Rh(PPh3)2]BPh4 に 10 当量の iPrNH2 を添加した溶液に,モノマーのフェニルアセチレン類を加えるとリビング重合が進行し,分子量および主鎖立体構造の制御されたポリ(フェニルアセチレン)類が生成した.重合のリビング性は速度論的手法や多段階重合により確認された.また,本触媒により 2 種類のフェニルアセチレン類を順次重合させることで,ジブロック共重合体を合成した.一方,さまざまな置換基 R を有する錯体[(dppf)Pd(R)Br]を合成し,これを主触媒とする置換アセチレンの新規重合系を開発した.この重合系で得られるポリマーの末端には,触媒由来の種々の置換基 R が導入されることを明らかにした.得られた末端修飾ポリマーをマクロ開始剤とし,ラクトンを重合することで,ポリ(フェニルアセチレン)とポリエステルを各ブロックとするブロック共重合体を合成した.

著者関連情報
© 2011 公益社団法人 高分子学会
前の記事 次の記事
feedback
Top