ポリマーに導電粒子を充填した複合材料は,温度上昇に伴い抵抗が増加するPTC特性を示す.筆者らは,温度上昇によるポリマーの結晶融解および体積膨張により見かけのフィラー充填率が低下し,導電パスが切断されることでPTC特性が発現すると予想している.以前報告した論文では,温度上昇に伴う体積膨張のみを考慮した見かけのフィラー充填率の低下に着目してPTC特性を定量的に解析した.これを踏まえ,本報ではPVDF/Ni複合材料において,さらに結晶化度も考慮し解析を行った.その結果,室温でのNi充填率に関わらず,見かけのNi充填率は温度上昇に伴い低下し,室温でのNi充填率に対して約98%になった際に抵抗率が室温での抵抗率の10倍になり,96%になったときに絶縁体の領域である108 Ω·cmになることが判明した.これは,PTC特性が発現する時のNi充填率が絶対値として常に一定ではないことを意味する.