2016 年 73 巻 1 号 p. 19-29
分子インプリントポリマー(MIP)は,鋳型分子を機能性モノマーと複合化して架橋後,鋳型分子を取り除くことで,鋳型分子のサイズ・形状・官能基の位置などを写し取った空間を高分子内に内包した分子認識高分子である.MIPは,作製法の簡便さと発現する機能の高さからタンパク質に代わる生体機能性材料として期待されているが,単純な手順で作製されるMIPは単一機能しか発現せず,多様な機能をもつタンパク質には依然およばない.近年,筆者らはタンパク質生合成の最終過程である翻訳後修飾を参考に,MIP作製後,そのインプリント空間内に部位特異的化学修飾を行うことで,MIPに機能の付与・変換・調整を行うポストインプリンティング修飾法(PIM)を新たに考案し,MIPの高機能化・多機能化について検討してきた.本報ではPIMによって導かれる高機能性MIPについて概説する.