高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
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73 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集論文=ファイバーマテリアル II
原著論文
  • 宮田 利彰, 武野 明義, 三島 佑太, 高橋 紳矢
    2016 年 73 巻 4 号 p. 341-346
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2016/05/17
    ジャーナル フリー
    気泡径50 µm以下のオゾンマイクロバブル(OMB)は,精練や漂白などさまざまな産業利用が検討されている.しかし,処理時間の短縮が課題である.本研究では,多孔フィルムから発生させたOMBにより,ポリエステル布帛の表面改質効率の向上を試みた.高溶存オゾン濃度水を得るためには,低水温に加え多孔フィルムに供給するオゾンガス濃度の向上が必要であった.表面改質効果をX線光電子分光法とカチオン染色性(K/S)により評価した.高い溶存オゾン濃度と高い反応温度の時,ポリエステル布帛の改質効果が高くなった.溶存オゾン濃度と反応温度を両立して高める必要があるが,水温が高い場合にはオゾンが分解してしまう.また,染色性と水温の関係から見かけの活性化エネルギーを算出すると,溶存オゾン濃度によらず一定となった.以上より,低水温により高い溶存オゾン濃度を維持しながら,布帛表面のみ局所的に加熱することで処理時間の大幅な短縮が見込めることがわかった.
  • 後藤 康夫, 根岩 祐貴, 平澤 祐, Sijun XU, Jiangchao SONG, 森川 英明
    2016 年 73 巻 4 号 p. 347-353
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2016/05/24
    ジャーナル フリー
    少量の酸化グラフェン(GO)をポリビニルアルコール(PVA)へ導入したコンポジット繊維をゲル紡糸・二次延伸によって作製し,GO添加が引張物性に及ぼす影響を調べた.導入したGOはPVA中で高分散し,繊維軸方向に配向していると推定された.2 GPa以上の強度ならびに40~50 GPa程度の弾性率を有する高性能PVA繊維マトリックスに対して0.5 wt%のGOを添加することで,強度および破断伸度は低下し,ヤング率は3~5 GPa程度増加した.この引張物性の変化は,PVA/GO間の界面接着力とPVAマトリックスからGOへ伝達されるせん断応力の力関係によるものと推定した.すなわち引張応力が低い領域では界面接着力がせん断応力を上回りGOが繊維の引張変形を抑制するために弾性率が増加し,破断点近くの高応力域ではせん断応力が勝って界面剥離が起こるために強度・伸度が低下したと考えられる.
  • 團野 哲也, 長谷川 絵美, 鴻巣 裕一, 皆川 美江, 戸木田 雅利, 松本 英俊, 谷岡 明彦
    2016 年 73 巻 4 号 p. 354-360
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
    等方相,液晶相,およびこれら二相が共存する状態のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)水溶液から,電界紡糸法によりナノファイバーを作製した.得られたファイバーの内部構造を,X線回折法で調査した.HPC水溶液は,25°Cにおいて濃度上昇に伴って42 wt%で等方相–コレステリック液晶相転移を示した.これらの溶液を昇温すると,35~50°Cで二相分離した.電界紡糸法により,濃度30 wt%~50 wt%のHPC水溶液から相状態によらず均一なナノファイバーが得られた.いずれの繊維においてもHPC分子鎖は11 Åの間隔で繊維軸方向に平行に配列した.また,ナノファイバーの分子配向度は水溶液濃度や温度にかかわらず,0.80~0.86の高い値を示した.
ノート
一般投稿論文
総合論文
  • 甲加 晃一, 日笠 茂樹
    2016 年 73 巻 4 号 p. 370-376
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2016/06/03
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン/炭酸カルシウム複合材料に関して,界面の接着と炭酸カルシウムの粒子径が疲労特性に及ぼす影響を検討した.界面を接着させる相容化剤として,無水マレイン酸変性ポリプロピレンを用いた.界面の接着は,疲労寿命を大幅に向上させた.界面の接着が,界面剥離による内部破壊の発生を抑制させたためと考えられる.一方,小粒子径のフィラーを用いた複合材料は,大粒子径のフィラーを用いた複合材料よりも高い疲労寿命を有していた.S-N線図の最大応力を降伏応力にて正規化して,疲労破壊の挙動を比較した.粒子径20 µmおよび0.9 µmの炭酸カルシウムを用いた場合,疲労破壊の挙動は,界面接着の有無に依存しなかった.しかしながら,粒子径6 µmおよび3 µmの炭酸カルシウムを用いた場合,疲労破壊の挙動は,界面接着の有無に依存した.
原著論文
  • 今本 翔也, 香西 博明
    2016 年 73 巻 4 号 p. 377-383
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2016/06/28
    ジャーナル フリー
    本報では,π共役系高分子の安定性向上を目的として,側鎖にアルキル基を有したフェノチアジン類のポリマーを合成し,末端を極性官能基でキャップすることでシリカとの複合化による有機–無機ハイブリッド発光材料の調製を行った.その結果,ポリマーの重量平均分子量(Mw)は4000~5700であり,クロロホルムやTHFに対して溶解性を示した.熱重量測定(TG)の結果,ポリマーの10%熱重量損失温度は280°C以上の値を示し,良好な熱安定性を示した.蛍光スペクトル(PL)測定では,THF溶液では490 nm,520 nmに発光ピークが見られ,水色~黄色の発光を確認でき,フィルムでも同様の発光性を有していた.また,ポリマー同様の発光特性を有しており,フィルムにおいて480~510 nmにピークが見られ,水色~黄色の発光が観察できた.得られた有機–無機ハイブリッド発光材料は光や熱に対する優れた安定性を示した.
ノート
  • 伊藤 航, 井田 勇貴, 萩原 時男
    2016 年 73 巻 4 号 p. 384-387
    発行日: 2016/07/25
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2016/05/23
    ジャーナル フリー
    Four N-(4-halogenophenyl)maleimides (4-Hal-PMI) monomers, N-(4-fluorophenyl)maleimide (4FPMI), N-(4-chlorophenyl)maleimide (4CPMI), N-(4-bromophenyl)maleimide (4BPMI), and N-(4-iodophenyl)maleimide (4IPMI) were synthesized and obtained as yellow needle crystals. A positive relationship between the Hammett’s substituent constants (σ) and 1H NMR chemical shifts (δ) of the vinylene protons of all 4-Hal-PMI were observed. Each anionic polymerization of 4-Hal-PMI with lithium tert- butoxide took place at the vinylene moieties and gave the correspondent poly(4-Hal-PMI) in 27–50% yields after 24 h at -60°C. A negative relationship was seen between the yields of poly(4-Hal-PMI) and the Hammett’s σ of each substituent of 4-Hal-PMI.
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