高分子論文集
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DNA単一分子鎖の凝縮転移とその凝縮構造にみられる多様性
山崎 裕一吉川 研一
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1999 年 56 巻 12 号 p. 772-785

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抄録

本論文では, 長鎖Deoxyribonucleic Acid (DNA) の単一分子鎖の折りたたみ転移 (コイル-グロビュール転移) について焦点をあてて議論する. 具体的には, 蛍光顕微鏡法による単分子直接観察および電子顕微鏡観察などを用いて, その転移様式を解明するとともに, 転移に伴って生じる凝縮構造に見いだされた多様性について紹介する. 一般的に長鎖DNAの折りたたみ転移はall-or-none的な一次相転移となる. このような転移挙動について, 鎖の硬さや低分子イオンの並進エントロピーの及ぼす影響を考慮することにより, 転移様式や転移点の変化を理論的に予測することが可能となる. 新規な転移形態として単一高分子鎖上に膨潤相と凝縮相とが共存する分子内相分離構造をとる経路や, 鎖の硬さにより低分子の液体, 固体のそれぞれに対応する相の存在などが, 単分子直接観察やシミュレーションなどから明らかとなっている. これらの知見は高分子電解質の希薄溶液物性のみならず, DNAの高次構造変化と遺伝子発現機構との関連など, 生命現象の本質的な理解を深める上でも意義のあるものと思われる.

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© 社団法人 高分子学会
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