Polyporus属は担子菌類サルノコシカケ目に属し, 世界的に分布する多孔菌類の主要属の一つである. Núñez and Ryvarden (1995) は子実体の外部形態に基づいて、本属を6つの属内グループに分類した. その1つであるFavolousグループには, 子実体は側生, 柄は短く殻皮を欠き, 傘肉は薄く革質の種が含まれている. 現在, 本グループ種として, アジアからはP. alveolaris, P. grammocephalus, P. tenuiculusそしてP. philippinensisの4種が報告されているが, これらの種には形態的に多様なものが含まれ、異なる分類群が含まれている可能性がある. また, これまでに, いずれの種にも一致しない本グループ種も採集されている.
そこで, 今回演者らは, 中国, マレーシアおよび日本で採集された本グループ種標本及び菌株を用い, 形態観察と分子系統解析による分類学的研究を行った. 本系統解析には, 他の属内グループに所属するが系統的に近縁なことが明らかになっている本属種や形態的類似種も合わせて使用した. rDNA-LSU とITS領域による分子系統解析の結果, 本グル―プ種は2つの大きな系統群に分割した. 第1の系統群にはP. alveolaris, Favolpus sp. No.1 およびFavolous sp. No.2が含まれた. また, Favolous sp. No.2はMelanopusグループのP. mikawaiと同一系統群を形成した. 第2の系統群には, ‘P. grammocephalus’, ‘P. tenuiculus’と従来AdmiranbilisグループにおかれていたP. pseudobetulinusが含まれた. さらに, ‘ P. grammocephalus’と‘ P. tenuiculus’はそれぞれ2つの系統群を含んでいる事が明らかになった. 本グループ種及びP. mikawaiの基準標本も用いた形態観察の結果, Favolous sp. No.1とP. mikawaiは形態的にも一致し, ‘P. grammocephalus’ に含まれた2系統群はP. grammocepalus及びP. acervatus, ‘P. tenuiculus’に含まれた系統群はLaschia spatulatas及びFavolous roseusとするのが適当であった.また, 日本産Favolous sp. No.2はいずれの既知種にも一致せず未記載種であることも明らかになった.