日本内科学会雑誌
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阪神淡路大震災時にみられた心血管系疾患の成因解析
高齢化社会における急性ストレスのインパクト
苅尾 七臣
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2000 年 89 巻 6 号 p. 1194-1205

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抄録

近年,ストレスが心血管系疾患の発症要因として注目されている.脳がストレスを認識し,どのようなメカニズムで心血管系疾患を引き起こすかを,阪神淡路大震災時のエビデンスに基づき解説した.阪神淡路大震災時には,最も被害の大きかった地域の心血管疾患死亡は高齢者を中心に,早朝から午前中に1.5倍,夜半から明け方に2倍増加した.その際,震災のストレス強度に比例し,一過性血圧上昇,血液粘度増加,凝固線溶亢進,内皮細胞刺激亢進等の急性危険因子が増悪した.これらの急性危険因子は交感神経系の影響を強く受け,日内変動を示し早朝に増悪する.震災時には,臓器障害の進行したハイリスク群に,強烈な精神的及び身体的ストレスが誘因となり急性危険因子を増悪させ,その日内変動が心血管系疾患の発症を修飾したものと推測される.本メカニズムは,今後,高齢化社会における心血管系疾患の発症予防および治療を考える上で極めて重要であろう.

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