ネットワークポリマー
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解説
天然樹脂セラック
森 大輔
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2014 年 35 巻 6 号 p. 285-289

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抄録

天然樹脂セラックは,体長0.6 mm 前後のラックカイガラムシがマメ科,クワ科など特定の樹木(母樹)の枝に分泌する樹枝状物質を精製したものである。セラックという言葉はShell(貝殻)+Lac(多数)が語源となっており,Shellac とはラックカイガラムシの分泌物が貝殻状になることに由来し,Lac はヒンズー語のLakh(10 万)及びサンスクリット語のLaksha(10 万)より由来した言葉で,ラックカイガラムシが木に何万と密集している状況を表したものである(Fig. 1)。ラックカイガラムシの生育条件は亜熱帯地方が 適し,タイ・インドが二大産地となっている。 また,産業革命以降,天然樹脂の中で唯一の熱硬化性樹脂として,木工塗料を始め,工業用材料などに幅広く使用されてきたが,石油化学の発達につれ,合成樹脂万能の風潮になり,セラックは天然物の安全性とセラックでしか得られない物性を利用した用途以外は次 セラックは紀元前2000 年頃迄遡ることができる。 第に需要が減少していった。しかし,近年の環境配慮や資源の有効利用の面,人体への安全面から,セラックが再び見直されるようになってきている。

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© 2014 合成樹脂工業協会
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