ネットワークポリマー
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総説
均一網目構造を用いた高分子ゲルの弾性と構造の相関の研究
片島 拓弥酒井 崇匡
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2016 年 37 巻 2 号 p. 73-80

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抄録

高分子ゲルの物性はさまざまな構造パラメータによって規定され,これらを用いて分子論的なモデル化がなされている。しかし,一般的な高分子ゲルには網目の不均一性が存在し,モデルを実験的に検証することが困難であった。著者らは近年,均一かつ構造の精密制御が容易なTetra-PEG ゲルを開発した。本稿では,Tetra-PEG ゲルを用いて,弾性率の結合率・濃度依存性を調べた結果について述べる。その結果,重なり合い濃度付近で調製したゲルの弾性率はphantom 網目理論によって予測されることが分かった。また,調製時濃度を増加させていくと弾性率はphantom 網目理論の予測値からaffine 網目理論の予測値に遷移した。この遷移の原因を調べるために引裂き試験・一軸引張試験・膨潤試験を行ったところ,trapped entanglement ではなく,架橋点の揺らぎが濃度上昇に伴い抑制されていることに起因することが示唆された。しかし,これらの効果を考慮した既存の分子モデルの予測とは異なる結果を示しており,新たな絡み合いの分子モデルの提案が期待される。

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© 2016 合成樹脂工業協会
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