日本食品科学工学会誌
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研究ノート
凍結含浸法により酵素処理された軟化ブロッコリーの品質に及ぼす製造プロセスの影響
中津 沙弥香柴田 賢哉坂本 宏司
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2017 年 64 巻 3 号 p. 150-156

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抄録

本研究は,ブロッコリーを供試材料として,凍結含浸法による酵素処理によって,口腔内で簡単に潰せるレベルに軟らかく,アスコルビン酸を含有した緑色および形状の保持された植物性食品素材を作製することを目標として,必要なプロセスと,各プロセスでの品質変化を明らかにした.

(1)減圧酵素含浸前のブランチングおよび凍結·解凍処理の必要性を検証した結果,どちらのプロセスも必要であった.ブランチングによる中心部までの80℃以上の加熱と,その後の凍結·解凍処理の相乗的な素材組織の弛緩によって,中心部までの必要量の軟化酵素の誘導が起こったことが示唆された.

(2)凍結含浸法による形状保持軟化素材を作製するための5つのプロセス(ブランチング,凍結·解凍,減圧酵素含浸,酵素反応,酵素失活)における試料の硬さとアスコルビン酸含有量を測定した結果,軟化にもっとも寄与したプロセスは酵素反応であり,アスコルビン酸含有量をもっとも減少させたプロセスはブランチングであった.凍結含浸法の必須工程である凍結·解凍および減圧による酵素含浸処理は,水溶性成分の分解および流出の主な原因ではないことが示唆された.

(3)本実験で,酵素と併用して含浸に用いた炭酸水素ナトリウムの主な効果は,素材内部のpHの低下抑制による緑の退色防止であり,軟化に大きな寄与はなかったことが示唆された.

(4)凍結含浸法を用いて軟化させたブロッコリーは,6および10分間煮沸処理されたブロッコリーに比べて,硬さの値は約1/5〜1/6であり,アスコルビン酸含有量およびa*値に有意差がなかった(p<0.05).凍結含浸処理されたブロッコリーは,目標とする硬さの値を満たすことができ,花蕾を含めて中心部まで軟らかく,舌と上あごで潰すことができた.

これらの実験結果から,凍結含浸法を用いた酵素処理が,ユニバーサルデザインフード第1版の区分2の5.0×104 N/m2以下を満たす軟らかさを付与し,アスコルビン酸を有する,緑色が保持された軟化野菜を作製するための有効な手法の一つであることが示唆された.

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© 2017 日本食品科学工学会
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