2000 年 15 巻 2 号 p. 287-298
本稿のねらいは、社会学における合理的選択理論の伝統を概観し、今後の発展の可能性を示すことにある。合理的選択理論は行為の目的合理性を過剰に強調すると同時に、選好と機会構造の形成過程をしばしばブラックボックスのままにしてきたため、社会学の中では異端でありつづけてきた。しかし、マイクロ-マクロ・リンクおよび行為の多元的合理性を梃子にしながら社会批判・政策提言を行っていくことは、社会学の良質の伝統に属する。そして合理的選択理論もそのような良質の伝統に属する。そのことが一見異端とも思える合理的選択理論が社会学の中で発展してきた理由の一つであり、このような伝統を共通の基盤にしながら他の学派との対話も可能であることを示す。