オレオサイエンス
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特集総合論文
ニュートリゲノミクスより観た脂肪酸が生体に及ぼす影響の網羅的解析-飽和脂肪酸の再評価
藤原 葉子
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2008 年 8 巻 10 号 p. 437-446

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抄録

飽和脂肪酸は血中コレステロール値を上昇させ, 虚血性心疾患のリスクを増加するため, これまで, 脂肪摂取エネルギー比と飽和脂肪酸の低い食事が推奨されてきた。近年, 生活習慣病と肥満との関連が明らかとなり, 虚血性心疾患リスクとLDLおよびHDLコレステロールとの科学的根拠も蓄積した。また, 高炭水化物食による血中TGの増加が明らかになったことから, 脂肪の摂取割合や脂肪の質についても, 総エネルギーや炭水化物とのバランスの中で再評価・検討する必要が出てきた。ニュートリゲノミクスの手法を用いて, 食事組成の遺伝子発現プロファイルを検討した最近の研究からは, 食事という長期的な環境因子が身体全体や血中脂質に与える影響は, 組織における脂肪酸そのものの直接的な作用によるよりも, カロリー制限による脂肪を減少させるほうが大きいことを示している。飽和脂肪酸はLDLコレステロールを増加するがHDLも増加する。飽和脂肪酸接取は, 対象者や食事組成によってはメリットとなる場合もある。脂質の量や質の摂取は, 炭水化物摂取量や個人レベルを考慮する必要があるだろう。

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© 2008 公益社団法人 日本油化学会
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