腸内細菌叢は, 生後嚥下した細菌により樹立し, その構成は生涯を通してほぼ一定であるという. 腸内細菌は, バリアー効果, 宿主とのクロストークを介してのホメオスターシスの維持, 短鎖脂肪酸の産生, 免疫調節作用など様々な機能をもつ. プロバイオテイクス治療は, 有益で安全性の確立された腸内細菌を外因的に補充することにより, 感染防御や人体の免疫調節に寄与するという新しい治療法であるが, 用いられる菌は
bifidobacteriumと
lactobacillusに大別される. 当教室の未熟児・新生児への
Bifidobacterium breve投与試験においては, 投与群において1) 生後早期に投与することにより有意に早期に同菌が便中に出現し, 2) 感染症全体および壊死性腸炎罹患率ならびに死亡率の有意な低下が認められ, 3) 便中酢酸の産生増加と酪酸の産生抑制, 4) 血清TGF-β値およびそのシグナル伝達因子の発現増強が認められた. また, 化学療法後の悪性腫瘍患児へ
B. breveを投与したところ, 末梢血NK細胞の再樹立時の細胞数は, 投与群において有意に高かった. プロバイオティクスの感染症, 癌・自己免疫性疾患などの予防・治療効果を積極的な大規模な臨床試験で証明することにより, 社会的にも広く国民の支持を受けうる信頼厚い治療法としてのゆるぎない地位が確立されるであろう.
抄録全体を表示