順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
51 巻, 4 号
選択された号の論文の34件中1~34を表示しています
Contents
目次
特集 800号記念特集
特集 最近の医療のトピックス
  • 小林 弘幸
    2005 年 51 巻 4 号 p. 490-500
    発行日: 2005/12/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    現在, われわれ医療従事者がどのような対策をもとに医療事故をなくすかが重要課題となっている. 小児を扱う医師の義務として, まず, 両親に小児疾患の特殊性と小児の体の特殊性を十分に理解してもらわなければならない. 小児で扱う疾患は様々であるが, 「小児は成人のミニチュアでない」ということ, 何が起こるか解らないということを医師も患者の家族も認識しなければならない. そのためにインフォームドコンセントを充実させることが大切である. 時間を十分にかけて簡単な言葉で説明し, 自由な質問をできる環境を確保しながら, 複数回の説明ができる体制を整えておかなければならない. また, 小児が専門でなければ, 速やかに専門医を紹介することや, セカンドオピニオンを積極的に勧めることも, 医療事故を防ぐ方法と考える. 現在, どのレベルの医師にも最低限の救命救急蘇生の技術と知識が要求されている. また, 入院中の患者に対しては, 療養・保健のシステムのほか, 生活指導 (食事・起居・排便・安静・運動など) についても, 具体的に指示すべき義務があることを認識しなければならない. 医療事故撲滅の鍵は, インシデントレポートをいかに医療従事者から提出させるかにかかっているが, 重要なことは, インシデントの様々な原因を分析し, その事故防止対策をたて, 対策の中での個人の役割を明確にし, 実行させることである.
  • --ADHD (注意欠陥多動性障害), アスペルガー障害を中心として--
    飯島 恵
    2005 年 51 巻 4 号 p. 501-508
    発行日: 2005/12/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    ADHDやアスペルガー障害に代表される軽度発達障害における関心は医療関係者と教育現場で近年高まってきている. 軽度発達障害の子供たちの一番の問題点は知的に明らかな遅れがないためさまざまな困難を抱えているにもかかわらず障害に気づかれない点である. 軽度発達障害の子供たちへの早期介入は, 二次的に併発する情緒や行動面での問題を予防する上でも非常に重要である. そしてこのような子供が通常学級に在籍しながら, それぞれ個人にあった, 個別の教育がうけられるようにするための特別教育支援が文部省によりたちあげられている. 教育・医療にかかわるさまざまな職種・機関が協力して早急に軽度発達障害の子供たちの支援体制を確立する必要がある.
  • 永田 智
    2005 年 51 巻 4 号 p. 509-518
    発行日: 2005/12/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    腸内細菌叢は, 生後嚥下した細菌により樹立し, その構成は生涯を通してほぼ一定であるという. 腸内細菌は, バリアー効果, 宿主とのクロストークを介してのホメオスターシスの維持, 短鎖脂肪酸の産生, 免疫調節作用など様々な機能をもつ. プロバイオテイクス治療は, 有益で安全性の確立された腸内細菌を外因的に補充することにより, 感染防御や人体の免疫調節に寄与するという新しい治療法であるが, 用いられる菌はbifidobacteriumlactobacillusに大別される. 当教室の未熟児・新生児へのBifidobacterium breve投与試験においては, 投与群において1) 生後早期に投与することにより有意に早期に同菌が便中に出現し, 2) 感染症全体および壊死性腸炎罹患率ならびに死亡率の有意な低下が認められ, 3) 便中酢酸の産生増加と酪酸の産生抑制, 4) 血清TGF-β値およびそのシグナル伝達因子の発現増強が認められた. また, 化学療法後の悪性腫瘍患児へB. breveを投与したところ, 末梢血NK細胞の再樹立時の細胞数は, 投与群において有意に高かった. プロバイオティクスの感染症, 癌・自己免疫性疾患などの予防・治療効果を積極的な大規模な臨床試験で証明することにより, 社会的にも広く国民の支持を受けうる信頼厚い治療法としてのゆるぎない地位が確立されるであろう.
原著
  • --リザーバーを用いた5-FU持続静注・CDDP静注併用療法の有用性--
    櫻田 睦, 田中 真伸, 石引 佳郎, 坂本 修一, 冨木 裕一, 坂本 一博, 鎌野 俊紀
    2005 年 51 巻 4 号 p. 519-527
    発行日: 2005/12/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 切除不能あるいは再発大腸癌に対し, リザーバーを用いたlow dose5-fluorouracil: fluorouracil (5-FU) +cis-diamino dichloreplatinum: Cisplatin (CDDP) 療法 (low doseFP療法) による外来・在宅化学療法を行い, その有用性を評価した. 対象および方法: 根治切除不能と診断した進行あるいは再発大腸癌23例を対象とし, lowdoseFP療法 (5-FU 300mg/m2/d, civ, dl-5+CDDP7mg/m2/d, iv, dl&4) をProgressive disease (PD) もしくは毒性発現まで施行し, 奏効率, 生存期間, 在宅期間率 (在宅期間/生存期間), 安全性, 医療コストおよびQuality of life (QOL) に関するアンケート結果を検討した. 結果: 奏効率は17%, No Change (NC) まで含めると83%で, PDに転じるまでの平均期間は8ヵ月であった. また在宅期間率は75%であった. 手指の色素沈着11例, 口角炎・口内炎5例, 嘔気・嘔吐3例, grade2の白血球減少1例等の有害事象が認められたがいずれも軽微であった. カテーテルトラブルは7例に認められ, 1例はポートの入れ換えを要した. 外来・在宅癌化学療法の経費は入院化学療法に比べ約1/4-1/5であった. 結論: リザーバーを用いた外来・在宅癌化学療法は安全・確実に施行でき, 患者のQOLの向上と医療経済面から有用であると考えられた.
  • 高橋 玄, 大内 昌和, 柳沼 行宏, 石戸 保典, 小見山 博光, 松岡 隆, 笠巻 伸二, 坂本 一博, 鎌野 俊紀
    2005 年 51 巻 4 号 p. 528-533
    発行日: 2005/12/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 大腸mp (muscularis propria) 癌は進行癌であるものの比較的予後良好な大腸癌であるが, ときに他臓器への転移を認め, 予後不良な一群が存在する. このような他臓器転移をする大腸mp癌がどのような性質を有しているかを間質の線維化の面から検討した. 対象: 1996年-2002年に当科で経験した大腸mp癌手術症例78例を対象とした. 方法: 腫瘍最大割面像において免疫組織化学染色を施行し, α-smooth muscle actin (α-SMA) 陽性, Desmin陰性, CD34陰性を筋線維芽細胞とし, その分布・増生を間質の線維化とした. 画像解析装置を用い, 間質の線維化面積を定量化し, 断面積に対する線維化面積の比を間質の線維化率とした. 結果: 大腸mp癌他臓器転移症例は8例 (8/78例, 10.2%) にみられた. 他臓器転移群の間質線維化面積は16.2±9.6mm2, 無転移群は14.0±9.0mm2で差は認められなかった. また, 他臓器転移群の間質線維化率は22.9±8.0%で, 無転移群の17.3±7.5%と比べ有意に高値であった (p=0.043). 結論: 大腸mp癌の他臓器転移群は無転移群に比べて間質の線維化率が高値であった. 大腸癌間質の線維化率は大腸mp癌予後不良因子となる可能性が示唆された.
  • 石戸 保典, 鵜瀞 条, 神山 博彦, 柳沼 行宏, 笠巻 伸二, 坂本 一博, 進藤 孝之, 丹羽 眞一郎, 鎌野 俊紀
    2005 年 51 巻 4 号 p. 534-539
    発行日: 2005/12/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 大腸癌リンパ節転移に関わる遺伝子を同定することを目的に, CGH法を用いて, 手術症例の原発巣について遺伝子解析を行った. 対象: 2003年4月から2004年12月に当科で手術を行った大腸癌46例を対象とした. このうち, リンパ節転移を伴うものは30例でリンパ節転移を伴わないものは16例であった. 方法: 手術で得られた大腸癌原発巣の新鮮凍結切片からマイクロダイセクションによりDNAを抽出し, CGH法で解析した. 解析結果をリンパ節転移を伴うものと伴わないものとで比較検討した. 結果: CGH解析の結果, リンパ節転移を伴わないものでは8p23, 8p22, 16q23において増加を認めた. また, リンパ節転移を伴うものは5p12で増加を認め5q13では欠失を 認めた. これらはFisherの直接検定の結果, 有意差を認めた (p<0.05). 結論: この結果から5p12, 8p23, 8p22, 16q23, 5q13の染色体領域には大腸癌のリンパ節転移に関与する遺伝子が存在する可能性が考えられた.
  • 山中 貴博, 玉内 秀一, 鈴木 祐介, 堀越 哲, 寺島 正純, 垣生 園子, 富野 康日己
    2005 年 51 巻 4 号 p. 540-547
    発行日: 2005/12/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 近年, Th1/Th2パラダイムに基づきIgA腎症の発症機序が検討されているが, いまだ明らかにされていない. 今回われわれは, Th2型免疫誘導転写因子GATA-3遺伝子導入トランスジェニック (GATA-3 Tg) マウスを用いて糸球体へのIgA沈着における粘膜免疫の関わりについて検討した. 対象: GATA-3 Tgと卵白アルブミン (OVA) 認識T細胞レセプター遺伝子導入トランスジェニック (TCR-Tg) マウスとの交配によりGATA-3/TCR-Tgマウスを作製した. 対照として, GATA-3遺伝子非導入WT/TCR-Tgマウスを用いた. 方法: 免疫方法は, 経口免疫と腹腔免疫の2種類について検討した. 経口免疫において, (I) OVA+コレラトキシン (CT) もしくは (II) CT単独, 腹腔免疫では (III) OVA+アラム (Alum) を投与した. 各々の群に対して最終感作から1週間後にOVAを追加経口投与し, 4日後に各群の (1) 血清OVA特異的IgA抗体価, (2) 尿中アルブミン・クレアチニン量, (3) 腎・腸管の病理組織学的検討を行った. 結果: OVA+CTの経口免疫GATA-3/TCR-Tgマウスのみに, (1) IgA・C3の糸球体への沈着, (2) メサンギウム細胞増殖を伴う基質の拡大, (3) 血清OVA特異的IgA抗体価の上昇, (4) IgAと同一部位にmannan-binding lectin (MBL) の沈着, (5) 糸球体内にIgG2aの沈着などを認め, ヒトIgA腎症と極めて類似した所見を呈した. 結論: IgAの腎糸球体への沈着は, Th2型免疫反応優位な環境下の粘膜免疫系を介して誘導されることが示唆された.
  • 稲葉 真範, 濱田 千江子, 呂 勇樹, 井尾 浩章, 小柳 伊智朗, 井沼 治朗, 林 佳代, 堀越 哲, 富野 康日己
    2005 年 51 巻 4 号 p. 548-556
    発行日: 2005/12/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 長期の腹膜透析療法では, 血管新生を伴う腹膜の線維性硬化が惹き起こされ, 中皮細胞の脱落を起こし被嚢性腹膜硬化症を発症することがあるが, 詳細な発症および進展機序は明らかではない. 最近の研究では, その機序として種々の成長因子の関与が検討されている. 今回, クロールヘキシジングルコネート (CH) 腹膜硬化モデルマウスを用いてケミカルメディエーター遊離抑制薬であるTranilastの腹膜硬化抑制およびサイトカイン放出抑制効果について経時的に検討した. 対象: C57BL/6JマウスにCHを週3回, 3週間腹腔内に投与して腹膜硬化モデルをCH群, Tranilastを投与した群をCH+Tranilast群および15%エタノール生食投与した群をコントロール群とした. 方法: CH群とCH+Tranilast群の腹膜の厚さの比較や抗ビメンチン抗体, 抗cytokeratin Pan抗体および抗肝細胞増殖因子 (HGF) 抗体を用いて免疫組織化学的検討を行った. さらに, トランスフォーミング増殖因子-β1 (TGF-β1) およびIII型コラーゲンについてRT-PCRで半定量的に検討した. 結果: CH群では経時的に腹膜は肥厚していたが, CH+Tranilast群では14日目まではCH群と比較して明らかに腹膜の肥厚が抑制され, 表層にHGF陽性細胞を認めた. さらにCH+Tranilast群のTGF-β1およびIII型コラーゲンmRNA発現は, CH群に比べ抑制されていた. しかし, 21日目には腹膜の肥厚は増悪傾向となり, III型コラーゲンmRNA発現も上昇していた. 結論: TranilastはTGF-β1の抑制および中皮細胞の脱落を抑制することにより, 腹膜の線維性肥厚の進展を遅延させる可能性が示唆された.
抄録
順天堂医学原著論文投稿ガイドライン
順天堂医学投稿規程
編集後記
feedback
Top