PLANT MORPHOLOGY
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特集I イメージングおよびその関連技術と植物学
重力感受をライブで視るための新しい顕微鏡技術
豊田 正嗣森田(寺尾) 美代池田 憲文田坂 昌生
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2012 年 24 巻 1 号 p. 23-32

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抄録

地球上で生命が誕生して以来,生物と重力は切っても切れない関係にある.重力は我々の生活空間を規定し,生物はその重力場の中で適応し,進化してきた.多くの植物は重力の「大きさ」と「方向」を感受し,細胞壁の強度を調節したり,器官を屈曲させたりと形態を変化させる.我々はこれまでに,植物の重力応答の1つである重力屈性反応を,分子遺伝学的手法および2つの特殊な顕微鏡を用いて研究してきた.その顕微鏡の内1つは,植物標本を垂直に保持したまま蛍光観察ができる「垂直ステージ共焦点レーザー顕微鏡」であり,重力の方向を変化させた時の細胞内の反応を視るのに適している.もう1つは,植物標本を遠心しながらリアルタイムで明視野観察ができる「遠心顕微鏡」であり,重力の大きさを変化させた時の細胞内の反応を視るのに適している.近年,様々な顕微鏡法・イメージング法が開発され,「視る」ことの重要性が益々高まってきている.本稿では,普段論文ではあまり詳しく記述されない装置(顕微鏡)や観察方法に力点を置いて,重力という地球上に普遍的に存在する力を研究対象にした時,どのような点を克服しなくてはならないか,どのような装置が必要か,そして何がどのように視えるのか,を開発の秘話を含めて紹介する.

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© 2012 日本植物形態学会
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