霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-1
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ポスター発表
テナガザル汎用マイクロサテライトマーカーの探索
*松平 一成石田 貴文
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抄録

[目的]これまでテナガザルを対象とした分子生態学的研究、特に常染色体上の多型マーカーを用いた研究は、大型類人猿のものに比べて非常に少ない。その要因の1つとして、ヒトとの系統関係が離れているために、ヒトの遺伝的多型マーカーの適用が難しい点が挙げられる。また先行研究では、ある種のテナガザルで多型が確認されても、他の種では多型が見られない、または相同領域を検出できないという例が報告されている。本研究では複数のテナガザル種に適用可能な汎用マイクロサテライト多型の探索を行った。
[方法]2属3種のテナガザル(Hylobates lar(20個体)、Hylobates pileatus(9個体)、Symphalangus syndactylus(11個体))を検索対象としてマーカーの選定をした。ヒトのマイクロサテライト検出用プライマーセットを用いてPCR増幅を行い、キャピラリー電気泳動によってアリルサイズの決定を行った。また、Hylobates agilisNomascus sikiそれぞれ1個体についても同様に検索した。
[結果]検索した16座位の内、15座位で、検索対象とした5種のテナガザルで増幅が認められ、多型の存在も確認された。H. larではアリル数が4~17、ヘテロ接合度(観察値)が0.15~0.85であった。H. pileatusではアリル数が2~7、ヘテロ接合度(観察値)が0.22~0.89であった。S. syndactylusではアリル数が4~16、ヘテロ接合度(観察値)が0.45~1.00であった。またH. agilisN. sikiでもそれぞれ14、8座位で多型が確認された。
[考察]本研究によってテナガザルのマイクロサテライト10座位において新たに多型が確認された。今後これらの多型マーカーを用いることで、野生のテナガザルの分子生態学的研究が進展すると期待される。

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© 2011 日本霊長類学会
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