2017 年 58 巻 8 号 p. 1006-1013
抗体医薬は多発性骨髄腫患者への新しい作用機序をもつ有望な薬剤として登場してきた。中でもCD38抗体,SLAMF7抗体はすでに再発難治多発性骨髄腫患者への効果が示されている。CD38抗体であるdaratumumabは単剤でも再発難治患者へ有効性を示し,16 mg/kgのdaratumumabで治療された再発難治患者のうち36%と29%が,それぞれ別の臨床試験で部分寛解以上になった。Lenalidomide,dexamethasoneとdaratumumabを併用した第3相試験では,92.9%の再発難治患者が部分寛解以上となり,PFSの中央値は未到達対18.4ヶ月であり,daratumumabは再発リスクを約6割減らすことができた。一方SLAMF7抗体のelotuzumabは単剤では効果はなかったがlenalidomide,dexamethasoneと併用することで,第3相試験においてはPFSを14.9ヶ月から19.4ヶ月に延長した。毒性に関しても,重篤なものは少なく,infusion reactionが主なものであった。これら再発患者への良好な効果から,今後初発患者へも期待される薬剤である。