産業衛生学雑誌
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調査報告
三宅島雄山噴火後の三宅村中央診療所診療記録からみる労働者の健康状態
宇野 秀之堀口 兵剛大前 和幸内山 巌雄工藤 翔二香山 不二雄
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2005 年 47 巻 4 号 p. 142-148

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抄録

三宅島雄山噴火による全島民避難から4年5ヵ月が経過し,火山ガス噴出量は低減してきたものの,一部の地域では二酸化硫黄(SO2)濃度が大気環境基準を依然満たしていない.しかし全島民帰島へ向け,滞在型労働者による本格的復興事業が2002年7月から,また島民の一時帰宅型帰島事業が2003年4月から始まった.以前に我々が行った復興事業の労働者検診(2003年1月),一時帰宅型帰島事業参加島民の症状調査(2003年10~12月)では,SO2濃度と労働者のピークフロー値及び帰島事業参加者の呼吸器症状との間に明らかな相関関係は認められなかった.SO2は以前より呼吸器・循環器系への影響が言われており,東京都現地対策本部と三宅村は島内作業者全員に対しての予防対策として脱硫装置付き建物での生活,脱硫用マスク着用の指導,また入島者全員に対し充分な情報提供を行ってきた.今回,我々は2001年6月27日~2004年6月30日までの三宅村中央診療所診療記録を検討したが,SO2濃度と直接的に関係している症例はなかった.しかし,島内労働者の気管支喘息発作初発の30歳代男性1件で高度な治療が必要であった.また災害避難命令期間中のため調査方法に大きな制約があり,SO2曝露指標の評価は不充分であるが,島民あるいは島内作業者に対する情報提供として,本調査報告は有用で重要な資料となるであろう.

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© 2005 公益社団法人 日本産業衛生学会
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