2012 年 56 巻 1 号 p. 25-29
骨軟部肉腫は,骨や筋肉などの間質より発生する悪性腫瘍である.小児や若年成人に発生し予後不良な転機をたどることが多く,予後改善のための研究は臨床的に重要である.また骨軟部肉腫は病理学的に50種類以上の組織型に複雑に分類されている.組織型によって予後や治療感受性が異なるため,骨軟部肉腫の治療成績改善のためには鑑別診断や予後予測,治療奏効性予測などのバイオマーカーの開発が必要である.我々は,主に蛍光二次元電気泳動法を用いて,骨軟部肉腫のタンパク質発現を網羅的に解析し,臨床応用を目指したバイオマーカーの開発を行っている.本稿では,消化管間質腫瘍の予後予測マーカーの開発とその発現検証試験の成果,および骨肉腫の化学療法奏効性予測マーカーの開発について紹介する.これらのバイオマーカーにより新たな治療戦略の策定および個別化医療の推進が可能となり,患者のQOL・治療成績改善に大きく寄与する事が期待される.