マウスが胎児期から発育するに伴って,生体内の多分子型酵素の変動がどのように起っているのかを知るために,ddn系マウスを用いて各種組織LDHアイソザイムについて調べた.マウスのLDHはすでにMarkertらによって報告されているが,われわれは新たに大脳,小脳,肺臓を追加し,胎児期から成熟期に至る7発育段階における詳細な実験を行った.
胎児期の妊娠19日目の各組織のLDH活性値は肝臓>心臓>骨格筋>腎臓>大脳>肺臓>小脳の順であり,成熟期56日目では腎臓>骨格筋>心臓>肝臓>大脳>小脳>肺臓の順であった.また,妊娠19日目と生後7日目の各組織のLDH活性値を比較すると,腎臓,肝臓,骨格筋の組織では増加するのに対し,大脳,小脳,心臓,肝臓の組織では減少がみられた.
妊娠12日目の各組織のLDHアイソザイムの主分画はすべてLDH
5であったが,生後7日目では大脳はLDH
4に,小脳と心臓はLDH
3に,腎臓はLDH
2に主分画が変動を示した.成熟期では大脳は生後56日目で主分画はLDH
3,小脳は生後21日目でLDH
1,心臓および腎臓は生後21日目でLDH
2を示した.また,肺臓,骨格筋,肝臓では胎児期12日目から成熟期においてもLDH
5が主分画であった.
これらLDHアイソザイムの変動はマウスの発育環境に適応して変動しているのではないかと推定される.
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