生物物理化学
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ラットの腹部および背側部前立腺に関する比較研究
SDS-電気泳動法を用いた可溶性蛋白質の分析とその男性ホルモン依存性変化の差違
松尾 雄志西 望田中 幸夫六車 謙喜和田 文雄
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1983 年 27 巻 4 号 p. 173-179

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抄録

ラットの腹部前立腺(VP)と背側部前立腺(DLP)から可溶性画分を調製し,含まれる蛋白質をSDS-電気泳動法によって分離した.分離された種々の蛋白質が去勢および去勢後のテストステロン投与(以後,+Tと略す)によって変化する様子を解析し,VPとDLPの間における差を調べた.実験にはオスのSD系ラット(14~15週齢)を用いた.蛋白質種の含量は可溶性画分中の蛋白質100μgを分析し,得られたデンシトグラム上での相対面積値から求めた.
1.含量が最大の蛋白質の変化:VPにおける最大含量の蛋白質,16K(分子量約1.6万のポリペプチド),の含量は去勢によって減少したが,DLPにおける最大含量の蛋白質,67K,は増加した.2.特異的な蛋白質の変化:VPに特異的な13K,14Kおよび20Kの含量は去勢によって減少し,+Tによって正常に戻った.しかし,DLPに特異的な蛋白質の中で,30K含量は去勢によって増加し,+Tによって正常以下に減少した.また,120K含量は去勢および+Tによってほとんど影響を受けなかった.以上の様に,VPとDLPの間には著しい差が認められ,これらの蛋白質の去勢による変化はVPにおいて早く現われ,一方,+Tによる変化はDLPにおいて早く現われ,組織重量の変化とよく一致した.

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© 日本電気泳動学会
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